小判食え【毎週ショートショートnote】
「『小判食え』って嫌がらせ?
この令和に小判なんか流通してないのに」
彼女はすごい剣幕で怒っている。
ロックシンガーの俺が新曲に詞をつけている時「小判食え」というフレーズがちょっと降ってきた。
それを口ずさんだらこのざまだ。
「いや、このフレーズ、サビに合うと思うんだけどな。
ギターソロと戦うような感じでシャウト」
「どこを探せばあるのよ小判。骨董屋?博物館?
しかも小判なんて食べられないでしょ?」
確かに、彼女の言うことは全部正しい。いつもそうだ。
フルタイム勤務の常識的な会社員の考え方だ。
俺は売れてないけどロックを諦められず、バイトの掛け持ちで食いつなぐ。
作る曲は、バイクを盗むとか、ちょっと顔貸せ校舎の裏に来いとか。
それがダサいと、彼女はまた怒る。
考え方も生活も全然違う。休日の過ごし方も違う。
それなのにどうして何年も一緒に暮らしているのか。
さんざん怒ったあと、彼女が振り向いて言った。
「・・・もうあきれたわ。さっさとご飯食え」
(410字)
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毎週ショートショートnoteに参加しました。
今回は「ごはん杖」はできなくて、裏お題「小判食え」でした。
両方のお題で投稿したり、1つのお題でも複数投稿したりしている方々がいらして、すごいなと思います!
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【今日の写真】みんなのフォトギャラリーから。
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やっぱりストラトキャスター。