真夜中万華鏡【毎週ショートショートnote】
病棟のラウンジに置かれた万華鏡。
葵は手に取って覗いてみた。
色とりどりのパーツが美しい模様を作り、円筒を回すと新たな模様に変わる。
「綺麗」
葵はため息をついた。
円筒に看護師の注意書きがあった。
(真夜中に覗いてはいけない)
「どうしてだろう?」
午前0時の看護師巡回後、葵はベッドを出てラウンジに向かった。
万華鏡を覗く。
「ほら、何も起きないじゃん」
すると窓際で何かが動いた。
「カーテン?」
違う。
平たくて大きいカーテン状の真っ黒な怪物だ。
大きな口が一瞬で葵を飲み込んだ。
「遅かった!」
葵を追ってきた2人の看護師は、落ちていた万華鏡を拾った。
「あの怪物、注意書きを守らないやんちゃな魂が大好きなのよ」
「でも先輩、葵ちゃんがいないと大変」
「大丈夫、体は返してくれる。今頃ベッドに戻っているわ」
魂を抜かれた葵は「おしとやかになった」と評判だ。
万華鏡の注意書きは、逆にやんちゃな魂を呼び寄せるため。
そう、先輩看護師は怪物の手下だった。
(413字)
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#毎週ショートショートnote 裏お題に参加しました。
【今日のイラスト】みんなのフォトギャラリーから。
「万華鏡」で検索。たくさんあってびっくり。
【2024年6月22日追記】この作品に超大幅加筆した小説「陸と海と空と闇」を執筆しました。全14話、順次公開し、note創作大賞2024に応募します!
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