お返し断捨離【毎週ショートショートnote】

妻の和子は断捨離とかで、古い洋服や小物をせっせと処分している。
おい、私の本を捨てるなよ。価値が出るかもしれないんだ。
退職したからと言って背広を捨てるな。いつか着るからとっておけ。
「他人のものは勝手に捨てたらいけないって、断捨離の先生がおっしゃっていたから。自分のだけよ」

和子の断捨離は進み、衣装ケースがいくつも粗大ごみになった。
身の周りのものは小さなポーチにまとめて、季節はずれの服はクリーニング店に預け、数日分の着替えをトランクに入れて・・・おい、旅行にでも行くのか？聞いてないし、許可してないぞ。
それに、私の食事はどうするんだ？

「私、この家を出ていきます」
「何もできない主婦のくせに、一人でやっていけるわけがない！」
玄関のチャイムが鳴り、知らない男が笑顔で入ってきた。スポーツマンタイプ、明らかに和子より若い。いつの間に！？

和子がテーブルに離婚届を置いた。
「古い価値観に執着するあなたへのお返し。これで私の断捨離は完了よ」

（413字）

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家で何か行方不明になるとすぐ「捨てた？」と訊くのはやめてほしい(-_-)

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カングーだそう。広い荷室、きっとスポーツマンタイプの新しいパートナーが「さあ、トランク乗せていいよ～！」と言う。