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askad
鋭利なチクワ【毎週ショートショートnote】
昨日の大地震で街は壊滅し、自宅はつぶれ、同居のおばあちゃんが亡くなり、あたしは一人で避難所に向かった。
おばあちゃんが用意した防災リュックを背負って、瓦礫だらけの道を歩く。
いきなり背後から肩を捕まれた。
そいつは汚い手であたしの口を塞ぎ、リュックをはぎ取ろうとする。
強盗だ。
「やめて!」と叫ぶが口が塞がれて声が出せない。
と思ったらそいつは手を離し、あたしの後ろで力なく崩れ落ちた。
リュックにぶら下げていた、斜め切りの鋭利な乾燥チクワがそいつの腹を刺していた。
あたしは思い出す。
気温四十度の日。
「お隣さんにチクワたくさんもらったんだけど、ちょっと干してみようか、非常食になるかもしれない」
おばあちゃんは、チクワをいろんな切り方で天日干しした。
三日でカチカチになった。
斜め切りのを見て「これ武器になるね」と笑い合ったのだ。
なったよ、おばあちゃん!
涙をぬぐうあたしの腕に、輪切りの乾燥チクワをつないだ非常食ブレスレットが揺れている。
(411字)
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お題「鋭利なチクワ」
この物語はフィクションです(=三日間天日干しをした乾燥チクワが実際に食用可能かどうかは未確認ですので、そこのところよろしくお願いしますm(__)m)。
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【今日のイラスト】みんなのフォトギャラリーから。
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一人で歩き出さなきゃいけない……