ひたすら短歌をあげていきます 連作多め 百首、八首、十首など

ひたすら短歌をあげていきます 連作多め 百首、八首、十首など

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少しずつ超超超短編が追加されていくnote 100話まで

ーーー1 頭蓋骨のどじょう  クーラーの温度を下げ、毛布を首元まで上げる。きらりと光るネイルがぼんやりと眠りかけていた意識に冷水をかけて連れていく。ふらふと起き上がり床に足を付け黒いテーブルまで歩を進める。その上にある爪切りを左手に持って、一際長い小指の爪を根元から切った。同じく黒い棚の小さな引き出しの中から真珠の玉を摘んでベランダから落とそうとしたところで左手首にどじょうが巻き付く。骨の軋む音が響いて目覚まし時計の音と重なり頭蓋骨にハンマーで殴るような衝撃を与えられた。目

    • 「憧れは猫を殺すのか」(小説)

      1 梅雨時の出会い  天気予報では梅雨前線が北上しているようだ。また雨がよく降る季節がやってくる。紫陽花が咲くので嫌いではないが、鞄を濡らさないように走らねばならないことが少し億劫だった。替えの靴下をもう一組入れて傘を傘立てからするりと引き抜いたこの少女は空想の世界に生きる中学一年生である。現実を生きながら、その目は現実の紫陽花を見ているようでよく見てはいない。瞳にその小さな花々を映しているだけで、頭の中では昨日見たアニメを反芻していた。  そして何か非日常のことがないのか

      • 仇と恋心 幸福に隠された恐怖(リクエストより)

         世界にはたくさんの境目があるのだと思う。空と海の境目。海と地上の境目、地平線。昼と夜の境目、黄昏時。此岸と彼岸の間の三途の川。外と内の境目、窓。  僕の人生には今のところ、境目が二度あった。一度目は彼女に出会った時、二度目は彼女が死んだ時だ。  彼女は僕と同じクラスで、窓際の席に座っていた。風でふわりとカーテンが膨らんで彼女の頬を軽く撫でた時の、少し邪魔そうな目が素敵だった。いつも風に吹かれて前髪を耳にかけていた彼女はおしとやかで、だからこそ少しの変化に一喜一憂してしまう

        • さみしい人間それでも辞められない哀れなものの短歌 二十首

          蛍ほど求められず蝉ほど 誰かに耳に届くこともない ほろほろと朝露にはなれない涙 蓮の葉は受け止めてくれない 蝉時雨 道路にぽつん 立っていて 四面楚歌だと身に染みた朝 この程度 分かっていても 認められ 褒めそやしてさ、欲しいんだよ 羨まし いつだって知られたくないし 知られなくていいと思ってた 身体中 掻きむしっても 血が出ても 気休めにすらならない誰か 向日葵の真似して日を浴びてみた 眩んでしまって お前はいらぬ 楓のような美しい血の涙 床に散らしてみたかっ

        少しずつ超超超短編が追加されていくnote 100話まで

        • 「憧れは猫を殺すのか」(小説)

        • 仇と恋心 幸福に隠された恐怖(リクエストより)

        • さみしい人間それでも辞められない哀れなものの短歌 二十首

          自己紹介

          短めの小説、短歌などをやっています。 八首連ねたり二首連ねたり百首連ねたり 小説はたのしくどろどろ

          自己紹介

          愛してる短歌に苦しめられ続ける徒然なる文章

          感性を墓までもっていていく沈め 気休めにすらならない水面 以下散文 短い     愛して百首の短歌を連ねたこともある、もちろん1回ではなく3回以上。  それでも短歌に苦しめられる日々は続く。   自分よりも後に続くものたちの美しくも優しい言葉に満ちた短歌、寂しくも実感のこもるそのものにしか詠めない尊さ。 どれだけ短歌に関して苦しい思いをしても、結局はそれらの短歌を嫌いになることもできずただただ楽しみ美しく言葉の連なりに涙を零すばかりである。様々な背景を持ちながら、そのも

          愛してる短歌に苦しめられ続ける徒然なる文章

          やさぐれ 短歌8首

          蛍ほど求められず蝉ほど 誰かに耳に届くこともない 蝉時雨 道路にぽつん 立っていて 四面楚歌だと身に染みた朝 この程度 分かっていても 認められ 褒めそやしてさ、欲しいんだよ 羨まし いつだって知られたくないし 知られなくていいと思ってた 身体中 掻きむしっても 血が出ても 気休めにすらならない誰か いいねに取りつかれたら終わりだと 言われたのになんでこんなに 悔しくも素敵なことも身に染みて 怨みも持てずただ泣きわめく 星すらも月光すらも恨めしい もう元には戻れ

          やさぐれ 短歌8首

          短歌 百首 秋にかくゆき 幻

          綿雪は山桜の花吹雪よ 手から離れてふらりと落ちる ささやかにこの手に気流を変えられて 予定調和を乱す粉雪 心ばかりのお礼だと雪化粧 紅に触れては 姿を消して 去る雪を そっと後押し 梅の香は 淋し嬉しを掻き混ぜて行く しずしずと流れる山奥の清水 触れては解けて乱さぬ水面 蛇の目傘 紅の傾斜に滑る ぱさりと落ちる音はひらがな 四方から公衆電話を囲む雪 責め立てられる なぜ心地よい? しとしとと雨に交じって 雪の音 形を崩し手には水だけ 両手で盃を作り受けたのに

          短歌 百首 秋にかくゆき 幻

          短歌 連作 「恋髪十首」

          壊れかけた街頭に映る黒髪 謎めく異世界はここにある 日は落ちて陰る退紅のあなたよ 天の川の畔の秋桜 憂いを帯びたあなたに贈る櫛 でも髪が許さぬこの慕情 咲きこぼれる曼珠沙華を君に差す あでやかなこと ここは異世界 一筋の清水を眺め思い出す 編み込まれた銀の水引を クリップを外し舞い散る黒髪に 触れる許可をいただき光栄 散る桜 あなたの髪に 触れること 慈しむ目ああ羨ましい 夕空のミルキーウェイ はあなた 似て忘れられぬ銀の水引 朝焼けに 染まらぬあなた 映る目

          短歌 連作 「恋髪十首」

          汐 連作短歌 百首 「四季」

          縛り 「春」「夏」「秋」「冬」という言葉を使わない 綿雪 山桜の花吹雪 舞う 残されたのは 濡れた髪だけ ひび割れた 清水の川を解きほぐす さりげない風 微睡むわたし 雪の中 解ける風待つ 寒桜 異世界に巻き込まれぬように しとしとと晴れ間に落ちるぬるい朝 混じる梅の香 涙が伝う 白梅は蕾を開き目を覚ます しずしず伺うこと許され 枝で傷ついたこの手はふつふつと 咲きこぼれては 微笑する我 月の夜に 東より来る 梅の香に 手繰り寄せられ 急ぐ雨雲 打たれては こ

          汐 連作短歌 百首 「四季」

          「静恋」(リクエストより)

           ある廃病院にいたときのこと。それまでの経緯はよく思い出せない。ただ受付カウンターに立っていた。  そのままカンファレンスが始まり、今日で任を解かれること、その別れとして花束と赤い飴玉をもらった。そして病院から出て振り返ると、そこには何も無かったのである。ただ萎れた花束と紅い玉だけが残っていた。ラッキーですよ、嫌な奴がいたら、これを飲み込んでくださいね。いつでもお迎えします。そんな声が聞こえた気がする。  そこからである。生活が一変した。周りの声がきこえるようになったのである

          「静恋」(リクエストより)

          汐 連作短歌百首「髪留め」

          ヘアゴムでまとめた髪を解くとき ぶちぶち抜ける 嗚呼みだれ髪 この世からイチョウの形の髪留めが 消えてしまって 虚しくなる夜 貴方にね 買ってもらった似合わない クリップで留めた髪を切った 手首の裏にキスするあげは蝶 時計の針が止まる幻想 黒髪を映える映画にする蘇芳 月の光に絡みつく糸 クリップを外しさらりと舞う髪を 受け止めて笑む 貴方に溺れ 星屑を簪にして舞う姫は 撫子の襲ひらめかせる 編み込みをまとめるバレッタはシルバー 黒みがかった茶髪はこれよ 真珠の

          汐 連作短歌百首「髪留め」

          「執着、それを引き起こした罪」

          1  この泉が中心にある何とも清々しい町には、それを中心に様々な店が立ち並んでいる。花屋にレストラン、一風変わって薬屋...ともかく、泉に行けば何かある。そんな町には少し珍しい機織りの店があった。それも木製の機織りを使って手作業で織るのである。反物を織るということは、着物や帯を仕立てる前段階を担う。華やかな町、発展した町に古き良き反物屋がある。それだけで人々はなんともいえない風情を感じたのである。その上、織られる反物はこれでもかというほどに美しい。  その反物で仕立て上げられ

          「執着、それを引き起こした罪」

          墨染の桜

           ある家の使用人は遺言で、主人の遺影に掛けた桜襲の袿はそのままにせよと言い残した。 もちろん霊柩車の中で火葬場に遺影を運ぶ時などは普通の黒いリボンを結んでおくのだが、家に飾る時には袿が掛けられる。それにはある伝説が関わっていた。あくまでも彼だけの遺言である。以下は使用人の一族に伝わる言い伝えであった。主人の一家に関わる。  ある女が男に恋をした。見合いをしてお互い意気投合。結婚するまでにいたる。彼は当時には珍しい金物のネックレスを贈った。翡翠のブロオチがあしらわれおり、控えめ

          墨染の桜

          恋心の成れの果て(小説)

          1  夏にのみ現れる幽霊がいた。幽霊らしい死装束。そしてその純白を強調する腰まで届く長い黒髪。その艶めきが、本来ならば不吉に思うはずの死装束さえらまるで美しい平安の姫君が着ける単と錯覚してしまうほどであった  その幽霊は、柳の傍で佇んでいる。そして、何かを見上げるように顔を上げて、また長い前髪がさらりと耳にかかっていた。怪異や都市伝説が心霊番組に年に一度取り上げられる現在、このような幽霊はちと珍しい分類である。もちろん、幽霊というだけでも珍しいといえばそうなのだが。  例え

          恋心の成れの果て(小説)