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55danyl
【詩】 彷徨
何が「真実」か嘘かわからなくなって
もう一度
白紙の画用紙に戻したくなる絵画
「血」が流れていることを知りたくて
前に立つ青年の脚の血管を探してみる
不意に臆病になった狭い空間
夜ふけに
ぼくはなんとか希望を探しだそうと
おもちゃ箱をひっくり返してみる
ぼくは何者だろう なぜここにいるのだろう
と
憂いにひたっている
ぼくは
幸せなのだろう
ここが
死後の世界なのだったらそれでもいい
ここにいるみんなは
「恐れ」を抱きながら
あくせく生きているにんげんなんだ
「血」の流れているにんげん
心のうずきを感ずるにんげん
ぼくらは交わる
「恐れ」のドアを閉めて
男として 女として
何かの「真実」を知りたくて
肌のぬくもりが
ぼくらをなぐさめる
『ここに生きているよ』と
ぼくは頭の中に咲いた黒い花を
一茎一茎抜きさいて
白紙になった画用紙に
橙色で何だかわからないもようを
ひとつ描いて
ぼくのついた嘘を
限りなく「真実」に近いものへと
化学変化させて
また新しい嘘へと塗りかえる
そうして
ぼくというにんげんのプロトタイプは
改良に改良を重ねながら
嘘とも「真実」ともいえぬものを
「食事」しながら
年を経る
今までいくつの「食事」を
このテーブルで
塗り重ねてきただろう
2014年作