【エッセイ】老人フォビア
ホラー映画というものを、わずかな例外(ジョーダン・ピール、アリ・アスターは気になる)はあるものの、ほとんど観なくなってしまった。そういうジャンルにもはやスリルを求めていない。
幽霊だの、お化けだのは卒業したし、ゾンビには飽き飽き。かつては悪魔モノが好きだったけれど、やはりもうネタ切れ感がある。若者向けのスプラッターやスラッシャーなどは論外だ。
その一方で、未だにヒトが動物(モンスターではなく、サメやワニ、猛獣など。恐竜を含む)に襲われて食べられる映画をついつい観てしまうのは、なぜなのか。自分の恐怖の方向性はそちらにあるのだろう。
だから、ホラー映画に詳しくはないのだけれど、ちょっと最近気になるジャンルがある。それは……老人ホラー。
Netflixオリジナル作品。介護施設のお年寄りが突然凶暴化して襲ってくる……。食指が動きません。
地球温暖化と熱波の襲来(?)で凶暴化したお年寄りが襲ってくるそうです……。やっぱり食指は動きません。
足腰が衰え病気がちだったり、要介護状態の老人たちが、元気いっぱい青春真っ盛りの若者に襲いかかる?
たしかに感情失禁とか、脱抑制などで暴言を吐いたり、暴力を振るったりする高齢者も少なくないかと思われる。コロナ禍で職を失って介護施設で働くようになった知人は、利用者にスリッパで頭をはたかれたり、熱いお茶をかけられたりしたそうである。聞いているだけで腹立たしいけれど、だからと言ってカッとなってやり返したりしたら、大変なことになる。そんな事件が繰り返し起こっている。犠牲になるのは、オールドピープルやエルダリーの方であるのは、言うまでもない。
超高齢社会にあって、老人フォビアとでも名づけたくなるような事態が静かに進行していないか。そう思って調べてみたら……。
老婆はともかく、GGIだの、BBAだの、敬老精神のカケラもないキャッチコピーだな。どうせヤングが作ったんだろ。
ヨーロッパ前近代の魔女狩りでは、身寄りのない老婆が多く対象になったと何かで読んだ記憶がある。老人フォビアは今に始まったことではなく、根っこには普遍的な老いることへの恐れがあるのかもしれない。
しかし、今は超高齢社会である。どうせなら、パンデミックにより凶暴化した格差社会の底辺の若者たち(アルコールやタバコ、ファストフードで不健康)を、結束したリッチな老人たち(ジム通いで筋骨隆々としている)がマシンガンで皆殺しにするような作品こそが求められているのではないか。攻めてるでしょ。シニア割りでどうぞ。
『ユースフル』
人類は滅亡する。
やんちゃ坊主たちが暴れ出す-
このクソガキ、トラウマ級。
ハナタレ小僧が、憑いて来る。
なんてね。
(了)
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