突発性仮名送り症候群

　「何がですか？」

「なすび」

　「もういいですよ」

「復唱してください」

　「ちゃんと説明してください」

「なすび」

　「茄子び」

「やはり、突発性仮名送り症候群ですね」

　「だからなんなんですかそれ」

「くるま」

　「説明してくださいって」

「くるま」

　「車ま」

「これは重症ですね」

　「何が？何がわかったんですか今ので？」

「大事な診断ですので、復唱に集中してください」

　「なんの意味があるんですかだから」

「むし」

　「虫し」

「かてい」

　「家庭い」

「ひらいけん」

　「平井堅ん」

「緊急手術です」

　「緊急う手術つ！？」

「命に関わります」

　「命ちに関かわるって、順序ょ立てて説明いして下ださい！」

「すごいスピードで進行している、麻酔を」

　「麻酔いって！ちょっ…」

「お疲れ様でした」

　「…え？」

「手術は無事、成功しましたよ」

　「何にが成功いこうで何にが失敗っぱいなんですか？症状ょうじょうの説明つめいもなく勝手ってに麻酔すいされて緊急んきゅう手術ゅじゅつってこれ手術ゅじゅつ代いとか僕くが払らうんですか？」

病院側は、最後まで医療ミスを認めなかったという。