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芯海

妹の様子を見に行ってくれ、と母から素っ気ないLINEが送られてきた。なんとなく聞きはしていたが、妹がゴミ屋敷に住んでいるらしい。近いとは言っても一人暮らしの都内から電車で2時間弱。駅から徒歩15分。4部屋しかないアパートの2階。チャイムを3回鳴らしても返事がない。今ココ。

ガチャ

カギがかかっていなうわっ、えー?

ドアが中から押し開けられる感触とともに白いものが大量に雪崩れてきた。

芯?

トイレットペーパーの芯。

無数のトイレットペーパーの芯。

足元から目線を上げると途切れることなく部屋の中までトイレットペーパーの芯の海。

天井まで到達していたであろう芯が、雪崩れた分だけ減って入口付近だけ9割くらいになっている。

背伸びしても中の様子が見えない。

かなこー?

って小声で呼びかけてはみたもののこんな海の中に人がいるイメージが湧かない。

ゴミ屋敷というか、芯屋敷というか、芯しかないのか嫌なニオイも全くない。むしろトイレットペーパー特有の芳香剤みたいなニオイがうっすらずっとしている。

カシャ

とりあえず、スマホで写真をとる。

家族のグループラインに投げてみる。妹も入っているのだが、妹からのリアクションはかれこれ3ヶ月はない。既読が2ついたのを尻目に、気付いたら僕は芯の海を泳いでいた。

平泳ぎ平泳ぎで、廊下であろう一本道を過ぎ、リビング部分に到達した。リビング部分は廊下よりも天井が高く、顔を出すことが叶った。上を見ると、ロフト部分にかなこがいた。

 は?お兄ちゃんやん

はぁ!?

 シン!ニュウ!

かなこが謎の掛け声をすると同時にピカーッと金色の閃光が走り、目を開けるとかなこはいなくなっていた。

一瞬だけ見えたかなこはたぶん全裸で、とにかくかなこがいたロフトに上2割だけ出ているハシゴを伝って上がってみた。

ロフトには芯がなく、ないけど1つだけ金色の何かがあった。それも芯だった。金色の芯。

あっつ!!

触ったら熱かった。

カシャ

とりあえず家族のグループラインに金芯を投げてみた。既読が2ついたのを尻目に、

シン!ニュウ!

と見よう見まねで叫ぶと同時に目を焼くような閃光とともに何かに吸い込まれる感覚がして、目を開けると渋谷のハチ公?が目の前にあってキャーー!!って声がして耳を塞ぐと2人の警察が駆け寄ってきて僕は交番の椅子に座らされた。そこで自分のチインコが見えたので自分が全裸だと気付いた。

いや、服は着てたんですけど、あれ?

いろいろお巡りさんにとっては支離滅裂な説明をしているうちに若い方のお巡りさんが白Tシャツと黒半ズボンだけ買ってきてくれて後日お金を持ってくるようにと連絡先と住所を書かされて、家すぐそこじゃん、と言われた。ノーパン半ズボンと乳首透け白無地Tでなるべく乳首が透けないように肩をすぼめて上半身から生地を浮かせつつ歩いて帰った。歩いて7分とかで家に着いた。歩いてる途中にスマホが無いことに気付いて、家に着いたところでカギがないことに気付いた。もちろんお金もない。お金もスマホもないと何ができるんだろう。歩くかいや電車で2時間弱って。そっかタクシーにもうとりあえず乗って、降りるときにめっちゃ謝ってすぐお金を取ってきますって言おう。タクシーを拾い、妹のアパートに着いてあれ?あれ?すみませんちょっと財布を無くしてすぐ妹に借りてきます!と言って許可を得る前に飛び出して階段を駆け上がりドアを開けて雪崩れの中に雪崩れに対し垂直に飛び込んで平泳ぎ平泳ぎブハッと顔出しハシゴを駆け上がりなんか自分の半袖とジーパンを着てスマホをイジッている妹に飛びかかりスマホを奪い取りロフトに転がっている財布をピックアップしてロフトから芯海(しんかい)にダイブした

 お兄ちゃん有名人になってんじゃーん

の声を背に明日から生きづらくなるめんどいめんどいめんどいめんどいのリズムで掻き進んでいる


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