サプライカズトシ
ピーンポーン
…え?深夜2時にチャイム、怖っ。恐る恐るインターホンの画面を見ると、桜井和寿がいたので通話をオンにした。
「はい」
「あ、最近のアルバム聴いてますか?」
「…え、あ、桜井さん…ですか?」
「驚かれましたか?」
「はい、え、なんですか?なんで、ですか?」
「サプライズ」
「サプライズ…?」
「サプライカズトシ」
「サプライカズトシ…」
「サプライズカトシ、かな」
「ズカトシ…」
「最近のアルバム聴いてますか?」
「…え、モノマネ、モノマネのかたですか?」
「本人本人、あ、ちょっと待ってね、う゛う゛んっ」
「…」
「…es」
「あ、」
「本人でしょ?」
「え、いや、まだわかんないですけど」
「最近のアルバム聴いてますか?」
「本人だとして、なんで僕の家に来」
ドン!🚪💥
「最近のアルバム聴いてますかって!なんでこれに答えないんですかずっと!」
「いや、え、最近のアルバムですか?正直あんまり把握できてないですね、ちょっと音楽自体あんま新しいの聴かなくなってきてて…」
「そのパターンね」
「はい、まぁ」
「青春時代に聴いてたやつだけ死ぬまで聴き続けるパターンね」
「そうですそうです、だからあのぉ、スーパーマーケットのジャケットとか、クジラのジャケットのやつくらいまで…ですかね?持ってるのは」
「オレンジは?」
「オレンジ?あー、なんかオレンジなんとかみたいなんありましたね、それも持ってます」
「さっきから持ってますしか言わないね」
「あ、いや、えーっと、シフクノオトくらいまでめっちゃ好きです」
ドンドンドンドンドンドン🚪💥
「あっえっすみませんそういう意味じゃなくて!すごいさっきもおっしゃったように青春時代によく聴いていたので!思い入れが違うというか!中学とか高校とか!はい!あ!『さよなら2001年』好きです!」
ドンドン…
「『さよなら2001年』好きなの?」
「はい、それだけじゃないんですけど、なんかこう言ったら何様なんだと思われるかもしれないんですけど、なんか思いつけないんですよね絶対、『光の射す方』へとかすごいですよね、あっ、『NOT FOUND』が一番好きです!」
「あっ、けっこう世代じゃないのに、そこらへんも知ってるんだ」
「はい!『深海』を中1か2のときに中古で買っ」
ドンドンドン🚪💥ガチャガチャガチャドンドンドン🚪💥
「あっでも何年か後に新品でも買いました」
ガチャガチャ…
「『深海』すごい良くて、そのとき最新だった『シフクノオト』もすごくて、そっから遡ってアルバムもシングルもCD屋で注文して全部コンプリートしたんですよ」
「ありがとう、ってことは『君が好き』のカップリングで『さよなら2001年』知ったってこと?」
「そうですそうです」
「嬉しいよ、最近またアルバム出してね」
「あっ、そうですね」
「あー持ってる?」
「持ってはいないです」
「持ってきたんだけど、いる?」
「えっ!いいんですか!?」
「あっ、あげるんじゃなくて」
「え?」
「いる?」
「あ、買う感じですか?」
「はい」
「ちょっと、えーーー、いまほんとにお金がなくて、あとあの、ミスチルさんだけじゃなくて、ほんとに10年くらいたぶん誰のCDも買ってないんですよね、なんかそんな感じじゃなくなってきて、だから」
「本人が来てるのに?」
「んーーーーーそうですねすみません」
ピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポピン
「すみません!」
ポピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポピ
「大好きです応援してます!」
ンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポ
「失礼します!」
ピンポピンポピンポピンポーン
「…」
「…」
「…」
画面から消え去った。
窓から外を見ると、ミスチルの他のメンバーがアパートの駐車場で待っていて、そこに桜井さんが合流して、バッテン🙅を出して、何か話しながら駅の方向へ歩いていった。
ヴー ヴー ヴー ヴー
こたつテーブルの上のスマホ、知らない番号から。
「…はい」
「ザ・ピロウズですけど、最近のアルバム聴いてますか?」
「なんなんだこの世代!!」
ドン💥
小峠みたいに叫んで壁ドンされた。