蕁麻疹のルール
結婚式に兵庫から来る家族に渡すお車代に新札が必要だったので銀行に出かけた。
そのあとに内科に行って「風邪っぽい」と伝えた。
とくに内科に行く必要がない軽い症状だったのだが、内科に行く必要があった。
診察。
診察のために内科に行った。
まだ分からないと思うので説明させてください。
僕は小さい頃から、外出すると顔を含む全身に蕁麻疹ができる体質だった。
厳密には、外出して家に帰ってきてから決まって30分経つと蕁麻疹が出てくる。
親や医者は紫外線アレルギーや太陽光アレルギーや言っていたが、別に曇りのときも雨のときも帰ってきたら蕁麻疹ができた。
34年間、ずっと悩まされてきた。
しかし不定期的に、なんか症状が出ない日もあった。
半年前、数年ぶりに出ない日があった。
その日は好きな声優の握手会に行き、帰りにSEIYUで惣菜を買って帰ってきた。
唐揚げを食べながらあ、出てない?と思い洗面台に行き、嬉しいというより不可解な表情をしていた。
何かルールがあるのか?
今日は何をした?
声優の握手会に行って、SEIYUで惣菜を買って帰った。
声優の専門学校に通っていた頃、蕁麻疹が出ない日が、他の時期に比べて明らかに頻度が多かった。
2日連続症状なしなんてのもあった。
あのとき一人暮らししていた近くにもSEIYUがあった。
もしかして、SEIYUに寄った日だけ症状が出なかった…?
あのときはもう大人になったから蕁麻疹の頻度が減ったもんだと漠然と思っていた。
しかし卒業してからはまた蕁麻疹の毎日。
同じところに3年は暮らしていたので、同じSEIYUには行きまくっていた。
変わったことは、声優学校に行かなくなったこと…
そして今日、声優と握手してSEIYUに寄った…
つまり声優とSEIYUが重なったとき、蕁麻疹が出ない…!
その日の行動に紐づいていたというのか?
なぜ?
声優とSEIYUと蕁麻疹になんの関連性がある?
そもそもこれは仮説に過ぎない。
ただ試してみる価値はある。
次の日、無理やり電車で1時間半のとこの好きでもない声優の握手会に行き、SEIYUに寄って帰った。
蕁麻疹なし。
その次の日は、知らん声優と握手してSEIYUには寄らずに帰った。
蕁麻疹が出た。
やはりそうか。
立証されたといっていい。
ただ原因が分かっただけで満足だった。
「セイユウ」との関連性はまぁいいとして、また蕁麻疹の日々を過ごすことにした。
銀行の両替機で新札10枚を手に入れたとき、ふと思いついた。
こたつテーブルの上、スマホが30分タイマーで振動し、要らない風邪薬の小袋をぶるぶる揺らしている。
勝利の音だった。