気配で出ない〜意識のフィードバック〜
めちゃめちゃおしっこがしたくてデパートのトイレに駆け込んだ。
2つある個室が埋まっていたので仕方なく小便器の前に立つ。
小便器の方には誰もいないから大丈夫だろう。
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出ない!
相変わらず出ない!
中学のときからずっとこう!
おしっこをしている間に刺される可能性がある。
横に人がいればもちろん、いなくても「誰かが入ってくる可能性」があるだけで無理。
針に糸を通すように、尿道に尿を通そうとするがあっ、あっ、となかなかもどかしい感覚。
個室では座ってするが、もし立ってやれと言われれば出るのである。
個室かどうかが大事。
こんな剥き出しの無防備な状態でおしっこをしろという方が間違っ……!
がっ…
激痛…
視界がぼやける…
倒れた拍子に、側頭部を床に打ちつける。
意識が遠のく中、目と鼻の距離に人のおしっこがあることを汚く思った。
プール付きの豪邸に住んでいると、意外とプールは使わないものである。
5年ぶりにプールに飛び込んでみると、おしっこだった。
目を覚ますと、すごい尿意で頭がぐわんぐわんする。
おねしょはしていない。
というか両足両手を海老のように結束バンドで縛られている。
パッ
眩しっ!
「目が覚めましたか?膀胱がパンパンでしょう?」
「…誰ですか?」
「ボンバーマンビーダマンです」
強すぎるオレンジ色の照明でやられていた視野がふわーっと整ってきて、くっきりと緑色のボンバーマンビーダマンの輪郭が浮かび上がってきた。
「それは、先入観ですよ」
「え?」
💣
「うわっ」
ボンバーマンだった!爆弾を置いたってことはただのボンバーマン!やばいやばいやばい!やばいやばいやばい!消さな消さな死ぬ!水水水!あっ!
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出ん!!
💥ボガーーーン
「便事休す。とはよく言ったもので、彼はやはり死を前にしてもなお、個室じゃないとおしっこができなかった。棺桶の中でやっと、おしっこができたらしいですよ。尿意のまま死んだ人間は排尿によって蘇生する。意識のフィードバック。以上、ボンバーマンでした。」