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終バス

21:38の終バスに間に合った。

これを逃すと倍くらいのお金と時間がかかる電車に乗らなければいけなかったのでよかった。

前方の扉から乗り込むとき、降りる駅を先に伝えるタイプのバスなのだが、降りる駅を伝えると「え?」って言われた。

声が小さかったのだろうが、左手を耳に添えて「え?」って言われた。

気持ち大声で駅名を言うと、デカイ舌打ちをされて、運転手が覆っていた手をのかしたICのところにスマホをタッチして中に進もうとしたら、「おい」と言われた。

「なんですか?」と言うと、「タッチ」と言われた。

「いやいまタッチしましたよ」

「してないこの野郎」

「ピッて言いましたよいま」

「この野郎」

と立ち上がろうとしたので、はぁ?と思ったがスマホを叩きつけて『ピッ』と言わせて中にズンズン進んで行った。

立っている人はおらず、後ろから3番目の席の通路側の席が1つだけ空いていたので座ろうとすると、いやそこで気付いたのだが、座っているのが全員、猿だった。

スーツを着ている猿。

おばあちゃんみたいな服装の猿。

セーラー服の猿。

パーカーの猿。

人間みたいにほぼ全員がスマホを見ている。

イヤホンとかヘッドホンもしている。

だが人間と違ってちゃんとケモノ臭い。

降りようとすると扉が閉まって発車してしまった。

仕方なくいつでも降りれるように扉付近を陣取った。

駅に着いて、扉が開くと、部活帰りらしき猿が20匹くらい乗ってきた。

そっかこっちは入り口の方の扉だった。

猿の波に押しやられて降りれなかった。

立っているのもやっとで、ケモノ臭い。

何部かわからんがとにかくでかいバッグをみんな持っていてそれでぎゅうぎゅう詰め。

その隙間を縫うように手を伸ばして『おります』ボタンを押す。

「次、止まります」

とアナウンスが流れている間、背後のスーツの猿が僕のケツを撫で回している。

「キー!!」

猿の甲高い鳴き声が耳をつんざいて振り向くと、別の私服の猿が痴漢猿の手を掴み上げていた。

バスが止まって扉が開いたが、周りの猿が痴漢猿を「キーキーキーキー」糾弾し出した。

そのせいで降りれなかった。

痴漢猿を部活帰り猿たちが部活バッグでボコボコにしている。

「停めて!!降ります!!おっさん!!停めろ!!」

キーキーわめく猿たちを掻き分け運転席まで行くと、さっきおっさんだった運転手がゴリラだった。

「ウホ?」

とぼけたゴリラが前の扉を開けてくれて降りれた。

終バス。

まぁ、終わってるバスだったが、最初のおっさん運転手がいちばん終わっていた。

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完熟トマト新聞
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