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ダメな理由がシンプルなだけに農業振興は難しい。

農業振興の議論は種々あれど、専業農家や法人の農業経営が苦しい理由はシンプルだ。(野菜を例に話す。米や畜産はちょっとまた事情が変わる)

①家庭の野菜消費量が減ってマーケットの価格競争が加熱し、価格が下がってるから農家経営は苦しい。

②輸入野菜に加工と廉価マーケットを取られて国産通常品の行き場もなく、値段を下げて加工用野菜を売らないといけないから農家経営は苦しい。

③かといって助成金があるので供給者の淘汰もなく、生産技術が上がってモノが安定的に供給されるようになって農家経営は苦しい。

参照「野菜をめぐる情勢 」農林水産省令和元年
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/yasai/yasai_jyousei_0112.pdf

農業談義では農協や政治やらが悪役になることが多いが、シンプルに国産野菜のマーケットが無くなってるので、事業が苦しくなってるだけだ。いい野菜を作ってもレッドオーシャンに投下されるだけで、永遠の豊作貧乏が繰り返される。新規参入しても生産技術が上手かろうが下手だろうが、売り先がなく離農する。野口さんの「やりがい搾取」の農業論にもあったが、日本農業はそんな袋小路に入り込んでいる。

解決法はなんだろう。上記の書籍では「野菜でなく情報を売れ!」という話だが、それは「街のブティックが上手くいかないなら全員シャネルになれば良いじゃん!」という乱暴な議論に感じた。でも、そういう事くらいしか対案が出せない、というのは議論の閉塞感を示しているようにも感じる。

普通に考えると、兼業農家には辞めてもらって専業や法人経営といった効率的な経営に集約という新自由主義的なルートだが、最近、そういう話も聞かなくなった。所得保障制度は逆行する施策だし、一時期は経産省が農業振興に入ってきていたが今やどうなったんだろう。15年前から、あまり生産サイドの状況は変わっておらず、ただマーケットが安くなって農業経営が厳しくなってるだけようにも感じる。

アグリ系のスタートアップの課題解決には生産性の向上を挙げているところも多いが、それが本当に所得向上につながるかは精査したほうがいい。またB品の活用を上げるところも多いが、それが正規品の価格を押し下げるリスクも想像してみたほうがいい。モノを増やせば収入が増えるというマーケットではもうないのだ。
(ただ現場の人繰りを円滑にするサービスには意義があると思う。技能実習制度という良く分からない制度に支えられる現場を変えるまで踏み込んで欲しい。)

もちろん、商圏内で競合優位をガッツリ築けている農家だけはそこそこ景気が良い。その人たちが生き残れば自給率やらもなんとかなるだろう。今はそのサバイバルレースを皆が頑張ってるように思える。でもそのレースの結果、爆安スーパーで美しい野菜が無料同然の値段で売られているのを見ると悲しくなる。

このまま、デフレを突き進んで、海外よりも国内の野菜の方が安くなり、中国本土の野菜供給地域として生き残るという選択肢も現実的にはありそうだ。それか安価なことと安定性を犠牲にして(そこは輸入に任せ)、オーガニックに舵をきるのも悪くない気がしてきた。

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