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人口減少時代における地方企業の「合理」「非合理」戦略 / 業務効率化、ストーリー投資、組織開発
先日、倉本圭造さんのブログを読んで、紹介されてる本も読みました。
「本当の採用困難時代はまだまだこれからだ」「だけど腐らずにやれることやろうぜ!」というノリで未来志向で良いなと感じてます。
また、先日、KOBIRA社が日経に取り上げてもらった記事に絡めて、どういうふうに地方中小企業では今度どう人口減少時代の採用に対応するのか、自分はどう考えてリソース配分をして投資しているのか書こうと思います。
戦略①社内業務の効率化投資は必須
まず基本的な前提としては、「中小企業が行わないといけない業務の複雑性、ボリューム、スピード感は10年前よりも増しているし、さらに増える可能性がある」と捉えてます。それは以前より採用の難易度が増したことや、電子帳簿法や労働基準法遵守などの法令対応も含め、コンプライアンスやガバナンス対応を中小企業であっても整備しないといけなくなっているからです。
業務量が増え、かつ複雑性が増えているのであれば、業務効率化投資は必須です。バックオフィスコストの社内割合が増えるのは一定しょうがないと考えていますが、人間の根性でカバーさせるのではなく、業務フロー自体を整備して余計な作業はなくし、かつシステムで可能な限り効率化させるというのが合理的かと思っています。
また、業務効率化を全社で促すには、毎日のルーティーンをこなすことよりも、自分自身で業務フローを改善できる人材を高く評価していくという人事制度も必要です。KOBIRAでもバックオフィス業務の等級ごとの役割定義の整備やキャリア制度の整備で業務効率化を促しつつ、社内のDX投資は積極的に行なっています。そっちの方がコスパがいいからですし、人には人でしかできない業務をやってもらいましょう。
戦略②戦略的なストーリー投資で「誰かに語られる会社になる」
先日、本社移転に関して採用が順調になる影響があったという記事を書いていただきまして、反響をいただきました。「じゃあ、うちもシャッター街に本社移したら採用うまく行く」と思われるのは早計で、地方の中小企業は「歴史に基づいたストーリーに即した行動をする」事が肝かなと思ってます。
KOBIRAの場合だと、「日置市にルーツを持ち、根ざしている100年企業であること」「母方の祖父母の衣料品店の跡地に施設を作ったこと」「社長自身も自宅を移した」事がフックになり、一連の動きはミッションにある「安心と希望を社会に与え続ける」への説得力を上げる事ができました。
田舎に本社を移したり、無料のシェアカフェ作ったりすることは「1年以内に金銭的なBS,PLを改善させる効果があるか」という意味では「非合理」です。ただ歴史に基づいたストーリーに沿った投資は、中期的な経営効果が大きいと判断していますし、KOBIRAの場合は大きな課題だった採用力の強化に短期的に貢献してくれました。
「自分がいないところで、誰かに語られる会社になる」事は現代の最強のマーケティングだと思っていまして、それにはアテンションを惹きつける目玉がありつつ、そこから語られるべきストーリーを提供する事ができる点が大切かと思います。そのための足りないパーツに投資することは、大きなリターンがあると思っています。
戦略③組織開発への投資で「社員が自分で価値判断できるようになる」
加えて組織に対する投資も同様です。ミッション、ビジョン、バリュー(MVV)や評価制度、Uniposなどのツールの導入、組織コンサルの伴走などへの投資に対して昔ながらの親分子分のマネジメントに慣れた社員からは、「短期的な利益につながらない非合理な経営判断」と疑問が出るのは分からないでもないです。
ですが、MVVというのは「価値判断」のツールと考えています。AかBかの行動の判断をいちいち上長や社長に仰ぐ事なく、MVVに基づいて行動することが現場レベルで出来るようになれば、スピードとパフォーマンスの正確性をあげることができ、かつ経営判断への理解度を上げることができます。また会社の価値観の共有ができることで、カルチャー(行動パターン)の変化も促す事ができます。
もちろん、KOBIRAのようにホワイトカラーとブルーカラーの職種が混在しているケースなどは、ITやビジネス知識が社員間で均一でないという問題もあり難しさが増していますがら、工夫しながら何年も粘り強くアプローチしていくことで成果につながっていくと思っています。
最後に
上記の組織やストーリー投資などは合理的に考えた結果ですが、短期的な利益につながらない非合理なことを社長が行なっていると、社内の信頼感を損なうリスクもあります。この点はミドルアップダウンマネジメントや経営チームの戦略的な発信でカバーできると思っているのですが、これは後日書く予定です。
きっとアトツギがこういう事を始めようとすると、社内では理解はされないと思います。信じた方向性をあきらめず、短期で結果の出る採用や自社HPの訪問数、つながる商談数や採用数などを説得材料にして、折れることなく続けていきましょう。