創業110年の鹿児島の老舗が、半年間で「初めてミッション・ビジョンを作成し、10個のITサービスを導入、運用するまで」の道のりを大公開
小平株式会社の代表取締役社長の小平勘太です。一昨日、全社でのミッション・ビジョン発表会を終えました。これから、バリュー作成、組織サーベイ、評価制度改定、新社屋移動、社内広報などなど沢山の事があるのですが、一区切りとして今までの半年の怒涛の道のりをまとめてみます。同じようなことで苦労している全国の中小企業のアトツギに届けば幸いです。(※ ミッション発表会当日の話や振り返りは別ポストにする予定です。)
2022年2月 総務部長の退職から始まった。
自分の会社は、私で4代目になるのですが、3代目の頃から勤めていた総務部長から退職の申し出が年明けごろにありました。その後釜を探すことになり、先代とその番頭の取締役の方に呼ばれ、「任せるから、お前の右腕的な人材を雇ったらどう?」と言われます。
その時に声をかけたので、社外で手伝っていた、薩摩リーダーシップフォーラムSELF繋がりで仲良くなった、池田亮平(下記のnote)でした。地元の居酒屋(串樽)で口説き、3月から入社してもらうことになります。
その当時、社内がコロナによるコミュニケーション不足もあり、色々あって社内のエンゲージメントは最悪。疑心暗鬼が吹き荒れて、自分自身も社長であるけれど、「こりゃもう詰んだ。持ち株どっかに売って、海外にでも行くかな」と思ってた時期です。そこで、まずは組織のアップデートが必要となり、池田くんと話して、まずは役員の関係性向上のから、始めることになりました。
社内ノウハウだけでは解決不能な状態にあると判断し、組織コンサルのmusuhiに依頼したのもこの頃です。それまでのうちの会社は「金は使うな」「自分で解決しろ」という自前主義があり、その点からも外部の組織コンサルに依頼するのはパラダイムシフトだったと思います。
2022年5月 役員合宿で人間関係のエッジを超えた
2021年末から2022初頭にかけて、事業部間で役員まで巻き込んでバチバチに喧嘩する事件があり、長老がそれを抑え込んだのですが、それが役員内でのギスギスに繋がっていました。
musuhiと役員合宿の設計の中で、その問題は避けて通れないとなり、初日にその話をまずがっつり行います。この合宿のゴールは最終的にミッション(パーパス)の作成だったのですが、大きなわだかまりを乗り越える体験が、役員のチームビルディングにもなったと思います。
合宿の最後にミッションを決めた後に撮ったこの写真の笑顔が、役員の関係のリカバリーができたことを示せたと思って、この写真を眺めると嬉しくなります。
2022年4月〜 総務部のチームビルディング、作業の切り出し、外注化
同時に池田くんが入社してから取り掛かってもらったのは、部長が辞めてこれからやっていけるのかという不安感が渦巻く総務メンバーのケアでした。入社と同時に新しいメンバーも入れてのチームビルディングから開始。それまで部内でも定例ミーティングもなかったので、週次の定例ミーティング開催、週1の1on1などもスタートします。池田くんは人間関係からのスタートという成功循環モデルを実践してくれたと思います(素晴らしい!)。
また、リソースが足りない部分や標準化をまるごとバックオフィスさんに委託。作業が足りない部分のサポートと共に、作業風景をzoomで画面共有しつつ、資料を作成してもらうという作業の標準化でも非常に助けられています。
社労士のHR Trustさんとも顧問契約を結び、就業規則の全面改定、日々の労務の諸問題の相談できる体制の整備も行いました。自分達だけで解決しなくてもいいんだという安心感に寄与してくれたと思います。
同時に始めたIT導入による生産性の向上と説明不足による組織不安
上記のように総務部のサポートを始めると、作業の多くが紙やエクセルベースで、行われていたり、部署ごとにルールが違っていたので、非効率になり、それが長時間労働や担当移動の妨げになっていました。バックオフィス業務の標準化に入ります。
上記が今年の4月から全社に入れたサービス一覧です (ジョブカンも入れたのに、表に入れ忘れてました) 。補足すると、smart HRとLafoolの全社での運用開始は10月からで、他にもリスキリング系のサービスとも話しています。
Remotty (バーチャルオフィス/ デスクワーカー用)や、Teams (ファイル共有 / 全員)、LINE WORKS (営業用) というコミュニケーションツールの導入はコミュニケーションに飢えていた組織だったので、ポジティブな面が大きかったかと思います。
また同時に全社員へのノートPC、iPad、スマホ などのデバイス支給も始めました。これはハードが無かったり古かったりすることでシステムを使えない、という言い訳をなくすためと、変化に対するポジティブな感情を持ってもらう狙いがあります。
ミッション、ビジョンの発表前に社内改革が始まる危うさ
ただ、この段階でもミッションやビジョンの発表前なので、説明もなしに会社がどんどん訳わかんないことを始めたということで、当然、現場の反発は起こりました。「総務が楽するだけじゃねえのか!」という意見もありましたが、「最初は大変だけど、楽になるから」「9月にあるミッション発表会で説明するから」と自分や池田くんとで現場の不満を宥めつつ半ば強引に進めました。
会社の大きな方向性がわからないのに、会社が人が変わったようにどんどんハードを支給し、ソフトを入れていくのは、なかなか綱渡りです。ミッション、ビジョンを説明してからの生産性改革がお勧めです。
ただ、自分や池田くんだけではなくて、合宿を経て役員との関係性にも変化が出てきたので、役員がチームとして社内対応ができたのは良かったです。また先日投稿した、Amazon方式でのミーティングに変えたのも管理職との対話の時間が増え、良かったです。
組織が会社のOSだと思う / 戦略人事の郷中塾
上記のように色々手を打つのにはもちろん、資金はかかります。ただ自分としては、いくらかかっても構わないから会社の組織人事をアップデートさせると思ってました。どんなに良いアプリ(人材やビジネスモデル)があってもOSが古いと動きません。こんな新しい事業やりたい!みたいな事はありますが、まずは組織のOSを変えることをお勧めします。
組織人事の世界というのは、正直自分は魑魅魍魎の謎の世界だと思ってました。ただそこにはちゃんと科学があり、経営そのものだと気をつかせてくれたのは、前述のmusuhiが主催する「戦略人事の郷中塾」に参加した時に話してくれたAP Company で人事責任者をやられている越川さんの話です。もともとユニクロ柳井さんの元でユニクロのグローバル人事を担当されていたかたで、「組織人事ってここまで経営戦略に基づいてエグくやってもいいんだ」という気づきもあり、また、組織人事を担当する池田くんと目線が合わせられたのも良かったです。
ただ、アトツギの人が自分の会社に適応する場合、オーナーが組織人事の重要性に気づいてもらえないのであれば、人事組織への投資は難しいと思います。いままでの経営モデルというのは人を安く使い倒すものだったので、そこの意識を変える事が重要です。またやり方としてはDX投資という名目で助成金使いつつ同時に組織に手を入れるのはありです。
自分の場合は、身もふたもない話なのですが、株式を親父から継いで7割確保できたので、突き抜けられたというところもあります。(これからは人に投資するべきだというnoteは以下)。
2022年7月 ビジョン(10年に辿り着きたい場所)は温泉で作った
忙しく走り回ってましたが、合間に温泉にあるコワーキングでの合宿でビジョンを作りました。
ミッションを会社の進む方向性、ビジョンを2032年に達成したい目的地、バリューをそこまでに大切にしたい価値観という定義です。本来は全部、ボトムアップで作るのが良いと思いますが、時間がかかります。会社にミッション、ビジョンがない事によるネガティブが大きいと思ったので、今回はトップダウンでミッション、ビジョンを作り、バリューを全社集会で意見を募りボトムアップで作るという事にしました。
ビジョン作成は100年後までの「自分年表」「会社年表」と「世界年表」を役員それぞれが書き、それを念頭にステークホルダー (社員、顧客、地域、環境 etc,,,) 向けに何を10年後に達成するかということで整理し、ビジョンを絞ります。
ビジョンに関してはMECEにはならないと思います。想いや既存のリソース、今までの歴史を踏まえて6個のビジョンができました。
2022年7月 ミッション発表会の準備が始まる
9.16にミッションとビジョンの発表会を行う事になりました。ミッション、ビジョン発表後は盛り上がるのですが、その後にも振り返ってもらうことが重要。ビジョンマップという手元におけるブックレットを用意する事になりました。
プレゼンの準備も開始。大きな変化になるのですが、歴史の連続性も示したいので、過去の初代の頃からの写真を集めたり、今までの歴史の調査なども開始。写真は昔に退職された方などからも提供いただきました。
会場も最近できたセンテラスホールを予約。スタバのドリンクに、ミッションやビジョンに関係するお菓子も頼んだりします。
また、役員で作ったということを意識づけるための役員のインタビュー動画を作成しました。当日の構成としては、社長や役員から一方的に社員に話すのではなく、7割の時間をグループワークやペアインタビューなどの話したり、レゴワークで手を動かす時間にしました(当日の様子や内容は、別投稿で共有します!)
2022年9月 ミッション発表会が終わり、今後
ミッション発表会がどうだったかは、下の自分の会の後の乾杯の顔で判断してもらえればいいかもしれません!(控えめに言って最高)
さて、これからは
・バリューの決定
・全社組織状態のサーベイと対策策定と実施
・人事評価制度の刷新
・全員面談
・ミッション浸透のための社内広報の開始
・生産性向上のためのツール利用の浸透
・全員面談
・採用のためのプロセス開始
・本社移転準備(後日プレス打ちますがミッションを体現する建物を作って移動)
などなど、と息をつく暇もありません。
ただ、2月の状態に比べたら1億倍マシ!なので、引き続き頑張って、良い会社にしていきたいと思ってます!
ミッション当日も最高だったので、レポートお楽しみに!