見出し画像

発展途上国という呼び方は、もうやめた方がいいかもしれない。

僕は「発展途上国」という言葉を使うことに、どうしても違和感を感じてしまう。


偉そうなことを言っておきながら、僕は結構使ってしまっている。ブログやSNSで発信する時、便宜上、経済的に豊かな国を「先進国」、国民の多くが貧しい生活を送る国を「発展途上国」といった感じで。


でも、よくよく落ち着いて考えたら、この「発展途上国」という言葉を使うのって、おかしくはないだろうか?


発展途上国という言葉で括れるほど、世界はシンプルではない

例えば東南アジアのカンボジアと、アフリカの南スーダンという2つの国を例に考えてみよう。この二つの国は、一般的にはどちらも「発展途上国」としてカテゴライズされる。


でも、カンボジアは内戦が終わってから25年以上が経過しているし、基本的には国全体で治安が安定している。僕も旅行で訪れたことがあるが、首都のプノンペンは経済成長が著しい。日本人もたくさん生活している。

農村部に足を運べば貧困問題もまだ存在してはいるが、それでも国全体としては、確実に経済成長している。


一方の南スーダンは2011年7月に独立した世界で最も若い国だが、2013年から内戦状態が続いており、飢餓や栄養不良で亡くなる子どもたちがたくさんいる。

周辺国に大量の難民が流出しており、内戦によって40万人以上が亡くなった。僕も現地で支援活動に携わっていたことがある。

画像3


一つの指標としてこの二つの国の GDP成長率を比べてみると、カンボジアは 6.8% (2017年)、一方の南スーダンはマイナス13.8%だ(2016年)。どう考えても、これだけの違いがあるこの二つの国を「発展途上国」という一つの枠組みで囲い込み、同列で語ってしまうのは、おかしくないだろうか。


「世界の大半の国々は発展途上国だ」と言われるが、その大半の国々を発展途上国という一つの枠組みだけで見てしまうのは、やはり違和感を感じてしまう。


一つの発展途上国の中にも、大きな格差が存在する

例えば僕が活動するアフリカのウガンダは、「発展途上国」として捉えられている。

だけど、ウガンダの国内では凄まじい経済格差がある。僕が支援活動をしているウガンダ北東部の村では1日100円以下で生活している人が大半だし、下痢やマラリアなど、本来防げるはずの病気で亡くなってしまう子どもがたくさんいる。

画像2

画像4


★関連記事★
アフリカの絶対的貧困を現地の写真付きで解説【リアルな実態を知れます】


一方で首都のカンパラに足を運べば、高級カフェがたくさんある。そういったカフェだと、綺麗におめかしした子どもたちが美味しそうにハンバーガーを食べていたり、ケーキを食べていたりする。

外国人や富裕層を対象にしたカフェだと、もちろん値段も高い。日本とほぼ変わらない。お腹いっぱいランチを食べたら、1食でも1000円以上は確実にする。北東部で生活する人たちの生活費約10日分だ。


さらに、ショッピングモール内にはVRで遊べるゲームコーナーもある。日本と同じように、こういった場所では一回100円程度で遊ぶことができる。貧困層の人たちの生活費以上の金額だ。

2018.12〜2019.1 アフリカ_190612_0448


また、首都のカンパラの中でさえ、大きな経済格差がある。一部の富裕層は洗濯機や大型テレビがついている高級マンションに暮らしているが、そこから車で15分も移動すれば、路上で生活するストリートチルドレンがたくさんいたり、トタン屋根のスラム街で暮らしている人たちがいるエリアがある。


一つの国の中にも、都市部と農村部の間には大きな経済格差があるし、一つの都市の中にも富裕層が暮らすエリアと貧困層が暮らすエリアの間には大きな経済格差があるのだ。

にもかかわらず、ウガンダを「発展途上国」という一つの言葉で括ってしまうのは、その国がどういった状況にあるのか考えるのをやめてしまう思考停止にもなりかねない。その意味で、僕はウガンダを発展途上国と呼ぶことに違和感を覚えてしまう。


★関連記事★
アフリカの経済格差はヤバすぎる。富裕層と貧困層の違いを写真で解説


全ての国が発展途上国から先進国になったら、地球環境は壊れる

「発展途上国」という言葉の対として使われるのが「先進国」だが、言葉の論理から考えると、「すべての国が経済成長をするべき」という考え方にも取れる。

発展途上国とは、言い換えれば「経済的に発展している途中の状態にある国」という意味だからだ。


でも、 世界に196ある国すべてが経済成長を続け、いつか全部が先進国になる日が来たとすれば、その日にはもう地球環境はダメになっていると思う。


現在人間が消費している自然資源の量は、地球1.7個分に相当すると言われている。もし地球上の全員がアメリカ人と同じ水準の生活をしたら地球5.3個分、日本人と同じ水準の生活をしたら地球2.9個分が必要になる。

また、 GDP成長率2%の国がそのままのペースで1000年間経済成長を続けると、4億倍も経済成長することになります。こんなの、どう考えてもありえない。

アフリカや東南アジアの中には、GDP成長率7%や8%の国もゴロゴロあるから、2%だと4億倍なので、7%だと…と、考えただけでも恐ろしい。


近年気候変動の問題が世界中で取り沙汰されているが、 今の発展途上国がこのまま発展を続けていき、いずれ先進国になれたその日には、地球上の資源は枯渇し、環境そのものが食いつぶされてしまうだろう。


発展途上国の代わりになる概念を、ビルゲイツが提唱している

実は「発展途上国という言葉を使うべきではない」という論調は、世界の名だたる有識者も主張している。


例えば、マイクロソフトのビルゲイツ。彼も「先進国」「発展途上国」という言葉を使うべきではないと主張しており、その代わりに世界は4つの所得グループで考えるべきだと語っている。


その4つのグループというのは、

①1日2ドル以下で暮らす人たち
②1日2ドル〜8ドルの所得で暮らす人たち
③1日8ドル〜32ドルの所得で暮らす人たち
④1日32ドル以上の所得で暮らす人たち

だ。


僕がウガンダで支援をしている人達は、一つ目のグループに分類される。この記事を日本語で、スマホで読んでいる人たち、つまり皆さんのほとんどは、恐らく4つ目のグループに分類されるだろう。


ちなみに、先進国と発展途上国という区別をしないことをビルゲイツに決意させたのは、昨年大きな話題になった『ファクトフルネス』という本を読んだことがきっかけらしい。僕もファクトフルネスは強く勧めているので、気になる方はチェックしてほしい。
国際協力おすすめ本32選 入門書から常識をブチ破る本、洋書までドドンと紹介


以上が、僕が発展途上国という言葉を使うことに対する違和感の正体だ。


発展途上国という言葉は、国際協力に全く興味のない人でも一度は耳にしたことがある言葉だと思うので、たしかに分かりやすいという側面もある。

その一方で、現実の世界を間違った捉え方をしてしまったり、思考停止に繋がったりしてしまう可能性もあるから、注意が必要だ。


今の世界を正しくとらえるためにも、こういった細かい言葉使いにも気をつけたい。


こちらの記事もよく読まれています。あわせてご覧ください➡国際協力とは具体的に何か?まるで教科書のようにわかりやすく解説

いいなと思ったら応援しよう!

原貫太 / フリーランス国際協力師
サポートを頂けますと、次の記事を書く励みになります。お気持ち程度、投げ銭感覚で構いません。これからも役に立つ記事をお届けしますので、ぜひともサポートをよろしくお願いしますm(__)m