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尾鷲 藍玉(5.13- R)

ヤバイ!めっちゃパンプしてる!!全然戻ってこないんだが!!!!パンプし過ぎて感覚も無くなってきた‥。
テンションって言いたい!!けど、絶対意地でもテンションて言いたくない!!!!
我慢して、レストして、我慢して、レストして・・・。
気付けば最後の核心の手前のレストポイントに着いていた。もう登るしかない。てか落ちたくない!!もう絶対に登りたくない!!
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帰省する度、このルートを触り続けて3年目のシーズンになった。
昨年は、ほぼトレーニングしか出来なかった。それでも頭の片隅にこのルートがずっとあった。2月に帰省すると決まった時に、「一年間のトレーニングの成果をせっかくなら出したい!」と思った。じゃないと、この一年間の自分が報われなさすぎる。
幸いなことに、付き合ってくれるパートナーも見つかり、そろそろケリを付けたかった。

とりあえず、ラインが毎回訪れるよく分からなかったので、初登のワカナ氏にラインをどう取ったか、動画はないのかを聞こうと連絡を送った。
返信はシンプルだった。
「自分で考えろ」
確かに!!それはそうだ。反省した。

まぁ、行ってみないと解決もしないので、一人でとりあえず行ってみる。
ワカナ氏のブログを参考しにしつつ、ムーブの解析をしていく。
2時間ぶら下がっていると、まぁこうだろうというラインは見えてきた。それと、なんやかんやムーブも全部解決した。
あとはトップロープで繋げ、細かい修正をするだけ。

2日後、一先ずトップロープで探る。
細かい修正はやはり必須だったが、なんとかこうだろうというムーブが全て完成した。
もう一度、トップロープで登る。
え?ノーテンで登れたんだが!!???
終了点で心臓の鼓動が大きくなるのを感じる。
その日はヘルメットも自分のロープも持ってきていなかったので、2便だけ出してリードするのはやめておく。というか、パンプがひどくて絶対落ちる。

明日、リードする。やっとケリを付けれる。
そう思うと、また寝れなくなってきた。頭では、無意識にムーブと岩の映像が鮮明に映し出される。初めての感覚だったが、全く落ちるイメージが湧かなかった。
「やっと登れるな~」と思ってた。今考えたらなんてお気楽な奴なんだと思うが、ホントにこんな感覚だった。

次に日、朝一で疑似リードで繋げてみる。
パートナーのあやか姐さんは
「疑似リードで登れたら、リードしたらよかったと思うよ!」
と言われて、リードするか結構迷ったが、疑似リードで繋げれるに越したことはない。一度、ムーブの確認も兼ねて疑似リードしてみる。
めっちゃパンプはしたが、普通に繋がった。
だが、ここで問題が起きた。パンプし過ぎてもはや本気トライになってしまい、全く腕が戻ってこない。それに、体幹もなんかよれてきてる。
これはレストがめっちゃいる・・・。無理を言って、2時間ぐらい休憩を貰い、姐さんのビレイをして、また少し休んで、トライすることに。

姐さんのビレイ終わり、トップロープを引き抜いた。ロープが落ちてくる瞬間が、スローに見えた。あぁ、これでリードするしかなくなった。
マントルを返してから終了点にクリップしたかったので、リップの下に延長していたスリングをそのままにするか、リップの上に上げるかどうするか迷っていると、姐さんが
「スリング上にあげてくる?」
と言ってくれた。
「マジすか!!お願いします!!!」
躊躇なく言った。普段なら自分でやっていたが、今日はお言葉に甘えよう。

レストした後、リードトライ。
「ナチュプロを使ったリードっていつぐらいだっけ??半年以上してなくね?!」そう思うと、変に緊張してきた。
「顔がリードトライの時の顔になってる!」
姐さんに言われ、顔がこわばってることに気付く。

「んじゃ、お願いシャッス!」
地面から足が離れる。

離陸直前

最初の6mで落ちると、ちゃんと怪我をする。絶対落ちられない。

一番の懸念である出だしの数手は、なんとかクリア。トライカムを効める。
「うん、効まってる。」
問題は次。カムを決めるのだが、向きと場所が少しシビアで、ちゃんと効めないといけない。その後は簡単なのだが、落ちて外れたら地面まで絶対に落ちる。
カムを効めようとする。
「あれ・・・?上手く効まらない!!!あ・・、重心の位置が今までと違う・・・・。」どうやら、少し重心をあげてしまったせいで、見え方がいつもと違い、上手く効めれなくなってしまった。
なんとか効めたものの、無駄にパンプしてしまった。
「ヤバいな。いったん降りようかな・・・。」
けれど、もう一度リードしようとなる気がしなかった。とりあえず上がる。

カム効めている
内心結構焦ってる

水平クラックにカムを固め取りレストする。相変わらずパンプしてる。「ヤバイなー‥。全然戻ってこないなー‥。」レストしていると何とか少し戻ってきたので、第一核心に入っていく。
僕のライン取りだと8手ぐらいの2級ちょいムズぐらいの核心なのだが、一手一手が少し遠いし、途中でレストが出来ずゴリ押すしかない。

クロスアンダーで頑張って持つ
ポッケを繋いで左にトラバースしてリップを取りに行く

最後の2手あたりで落ちそうになったが、何とか耐えてリップのガバを取ってジャムを効める。
「カムを効めなきゃ‥。もう‥。めっちゃパンプしてる‥。テンションって言いたい‥。」
プルプルしながら何とかカムを効める。全くパンプは取れない。
レストしても戻ってこない気がするので、無理やりトラバースに入って行く。
ガバのハンドジャムが効まるので、手は良いのだが足が悪い。力が入ってなんかパンプする。
「このトラバースが終わったら、めっちゃレスト出来る!頑張れ俺!!!」
そう自分に言い聞かせ、腕の感覚が無くなりかけながらなんとかトラバースを終え、核心手前に辿り着いた。

地味に悪い

「無理かもしれん。パンプし過ぎ‥。レストしても全く戻ってこやん‥。最後の核心こなせる自信がない‥。」
最後はカムを固め取り、初段程度の核心をこなして7mほどランナウトし、気持ち悪いマントルをこなすのだが、ボルダームーブが出来る気がしなかった。

「戻ってきてくれ!!頼む!!!!」
レストは無限に出来るので、頑張ってレストする。
7分ほどレストをし、何とか腕が戻ってきた。
深呼吸をし、覚悟を決め核心に入る。

最後の核心に入っていく
足上げが地味に悪い

少し遠い一手を取り、マッチする。
高い足に両足を上げる。ここで右手を少し飛ばすのだが、一瞬だけ身体が壁から離れる。
カムを足元にして、ここがマジで嫌な一手だった。
息を吸って、右手を出す。
やはり身体が壁から離れた。
何とか止まった!!
薄いアンダーをさし、左足を上げる。
右手を取りに行ったのだけど、少し外した。
けれど、もう意地でも落ちたくない。てか、もう一度リード出来る気が全くしない。
何とか持ち直す。
そして、遠いガバに左手を伸ばす。
取れた!!
もうここまで来た気合いしかない!!

あとはランナウトを耐えるだけ!!

ガバを繋いでちょっと悪いマントルに入る。既にカムは7m下にある。ここで落ちたら2度とリード出来ない気がする。
思わず声が出た。
マントルを返し、岩頭に這い上がる。
腕は感覚が無いぐらいパンプしきってた。
やっと登れた。やっと登れた!!!
「しゃ!!!!!!」
クライミングをしてて、初めて自然に出たガッツポーズが出た。

終了点にて

クライミングを初めて少し経ち、初めて買ったロクスノに藍玉のクロニクルが載っていた。
「なんか地元で凄いクライミングしてる人がいる!5.13!!R/X!?!」
こう興奮した記憶がある。

ロクスノ91号より引用


けれど、どこか自分には夢のような記録にしか思えなかった。
そこから4年後、やっと夢を現実にする事が出来た。

僻地に付き合ってくれたパートナーには感謝しかない。

グレードは5.13a Rはあると思う。
思い出補正もあるかもしれないが、山灯花やトレインスポッティングよりも悪い気がする。
少なくとも12d以上は絶対ある。

発表は5.13b Rだが、13b以上を登った事がないので、5.13- Rとさせて欲しい。

危険度は出だし数メートル以外あまりないと思う。
多少ランナウトするが、それは耐えるしかない。
水平クラックに効まるカムは外れない!
と思う。

左から使用したプロテクション
ルートが蛇行するので、延長をしまくる。
ロープは50mで良い

さて、家に帰って引っ越しの準備をしなきゃ‥。

次は何を登ろうか。

カエル

追記
もっと良いライン取りがあるかもしれないが、僕はこの岩をこう解釈しました。不自然なライン取りじゃないと思う。
参考に動画をあげときます。
左カンテの向こう側まで逃げず、壁を正面に登るライン取りならなんでも良いと思います。


ダースグレード的にはこんな感じ


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