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【感想】演劇計画プラネットナンバー第4回公演「プラネットナンバー3」


とてつもない可能性を秘めた作家を見つけたかもしれない。

まず結論から言っておく。この作品の出来は素晴らしい
役者や演出の話ではない。脚本が抜群にハイレベルなのだ。
それはもちろん「小劇場という枠組みの中で」の話だが、それにしても、久々に魂の震える演劇を観た

絶対に面白くないと思って鑑賞した。

まず、公式のあらすじを読んでいただきたい。
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地球が太陽に飲み込まれた。
それでも僕らはなんとか生きている。
ここはプラネットナンバー3、小さな星で暮らしている。
また太陽に飲み込まれる前に、生きろ、生きのびろ。
さあどこへ逃げようか、誰と闘おうか。
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いかがだろうか。小劇場演劇をよく観る人ならわかると思うが、危険な匂いしかしない。
失礼を承知で言わせてもらうと、学生劇団の旗揚げ公演や、初めて脚本を書く人の作品などによく見られる系統の話だ。まず、地球外の星が出てくるようなSFの世界を、小劇場という小箱で表現すること自体が難しい。よほど上手くやらないと安っぽくなってしまう。
実際、冒頭の数分で私は観るのをやめようと本気で思った。「神さん」と呼ばれる男の、ストーリーテラー風な立ち回りが鼻についたのと(後でこいつが愛おしくてたまらなくなるのだが)、なんだか冥界の入り口っぽい設定も出てきて、ますます危険な香りが増したからだ。
しかし、こういった作品にも触れて感想をきちんと書くのも自分への試練だと思い、続行することにした。

随所に光るセンスが、作品への没入感を徐々に高めてくれる。

突拍子もない設定の物語だが、絶妙にリアルな台詞回しが上手いのと、人物が置かれている状況を観客にきちんと伝えてくれるおかげで、徐々にこの作品にのめり込むことができた。
俳優の個性もキャラごとにマッチしていて、誰一人として背伸びをしていないのもいい。革命軍リーダーのハマり役っぷりは抜群だ。(褒めてます)
照明によるシーン分けが洗練されているのも非常によかった。具体的な舞台美術がなく、いくつもの場所が描かれる作品においては、照明に頼るところが大きくなる。
この作品の照明は人物を中心に当てられており、抽象的なセットにあまり光が当たっていないのが「安っぽさ」を軽減している。
偶然そうなったのか、意図的にそうしたのか知らないが、いずれにしても、細かい部分で観客の目線に立った作品作りができているので、私は感動したのだ。
これができていない演劇が、世の中には多すぎる。

選曲だけは、「これじゃない感」が否めなかった。

オープニングテーマや転換音楽に違和感があった。
あくまで個人的な感想だが、リアルなセットが組めない場合、作品世界の表現を最も後押しできるツールがBGMなのに、こんなにも的外れな選曲はもったいないと感じた。
作り手の頭の中には鮮明な世界が広がっていても、観客が目にするのは舞台上の空間だけだ。
安直な例だが、この作品の場合はストリングスがガンガンに効いた壮大な曲を使ったほうが、舞台の外側に広がる世界まで表現できる気がする。

物語が進むにつれて、この作品のもつポテンシャルが表れてくる。

正直なところ、細かいツッコミどころもなくはないが、全体としては気にならないレベルだ。
なんとも漫画的な展開や台詞が続くが、ギリギリのところで辻褄を合わせて説得力を持たせてくるから憎い。
小出しにしていた細かい設定が徐々に活きてくるところも、物語がちゃんと計算されて構築されていることが伝わり、感心する。
「人の命を奪ってでも生きる」、そんなテーマを、ポップなテイストで真剣に描いてくる。ここに出てくる人たちは、全員が「他者を見捨てて生き延びてきた」という前提に成り立っているから、こんな重いテーマも難なく扱える。

フミヤが、自分の殺した相手が主人公の妹だと知った時のリアクションが秀逸だ。下手に台詞にしていないのも脚本が良い
マネージャーには最後まで神さんが見えていないのも意味があるし、神さんが冒頭で繰り返していた「僕のことを〇〇と思う人がいたら、僕は〇〇かな」という台詞が、ラストでしっかり妹の台詞に置き換えられるのも素晴らしい。
良いところはたくさんある。特にカーテンコールに移行する流れは”神がかって”いた。

「演劇計画プラネットナンバー」のサイトを見たら、どうやら劇団は解散するようだが、作家の清水さんが今後も作品を作り続けるのなら、ぜひ観てみたい。
そう思わせられるほど、脚本が光る良作だった。

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