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【感想】ステージタイガー「Re:TURN!」

とてつもない熱量で突き付けられる、大人の青春群像劇!

このエネルギー量は半端ではない。
憧れの俳優を追って劇団入りした主人公が、夢を追いかける若者たちのシェアハウスでうんぬんかんぬん…
そこへ「地元に戻って就職しろ」と促す身内がうんぬんかんぬん…
というステレオタイプのテーマ、設定、展開、演技etc.
見ていて恥ずかしくなるような青臭い話なのに、最後の最後までノンストップで観せつける力を秘めていた。
演劇に馴染みがない人が観たら間違いなく拒否反応が出るであろう”ザ・演劇”といった芝居テイストなのに、俳優たちの嫌味がない芝居のせいで、なんとか観れてしまう。
なぜだか、彼ら彼女らを嫌いになれない。

ステージタイガーさんというと、私が大阪に住んでいた頃(10年以上前)に挟み込みのフライヤーで何度かその名を目にしたことがある。いくつもの劇団が生まれては消えていく演劇界で、10年以上も存続し、今なお精力的に活動されている劇団は稀有な存在だ。冗談抜きで尊敬に値すると思う。

観劇後の感想としては、物申したい事が山ほどある。非常にいただけない作風だ。しかし、せっかくこの記事を見つけて読んでくださっている読者を、私のネガティブな感想で不快な気持ちにさせたくはない。
だからあえて、ここはこの作品の良かった点を精一杯伝えようと思う。
納得できないところは多いが、観終わって嫌な気持ちにならなかったのは事実だから。

冒頭数分で、しっかりと作り込まれている舞台なのが伝わってきた。

殺陣のシーンから始まる本編は、照明もSEも安っぽくないしタイミングもバッチリだ。役者の動線や所作にも丁寧に演出がつけられているのがわかるし、何より彼らが、じゅうぶんな稽古量を積んで本番に臨んでいることが一目で伝わってくる。
劇中劇から現実に移行し、主人公の置かれた状況と周囲の人間関係が描かれていく。
様々な人物が忙しなく出てくるが、舞台上には非常に良い空気が流れている。これはおそらく、座組がもつ普段の空気感が良いからだろう。
登場人物の設定に”悪い人”が居ないのも良い。
皆、真っすぐに生きている人たちばかりだ。
それを俳優たちが真っすぐに向き合い、演じているから、なおさら気持ちがいい。

場面転換がスムーズでダレない。音楽の使い方も基本を押さえている。

演出の虎本さんは、場面転換も演出のうちであることをよくわかっている。物語をシームレスに移行したい時は転換用明かりのもと”演技の範囲内”で転換を行い、余韻を持たせて次の場面に移りたい時は暗転を使っている。
掲示物の貼り換えがあったり、それなりに多くの小道具を移動させているのに、時間がかかっていないのはお見事だ。
場面転換は観客にとって、いわば要らない時間である。こういう配慮が行き届いている舞台は、本当に貴重だと思う。

前半に見せたシーンの裏で、何が起こっていたのかを後半で見せていく構成の上手さ。

物語は、いわゆる夢追い人の苦悩と成長が描かれる。普通に展開すれば、ありきたりな起承転結に収まってしまうが、そこを脚本の構成で一捻りしてくれているのは有難い。
前半に見せたいくつかのシーンを反復し、後半ではそのシーンで人物たちがどんな思いを抱えてそう振る舞っていたのかを種明かしのように見せてくれる。
この仕掛けには思わず脱帽し、斜に構えて観劇していた自分を恥ずかしく思った。
「別れるってのは、関係を断つことじゃないから」という台詞も刺さった。
作品の中に一つでも記憶に残る台詞があると、なんだか良い物を見たという気分になる。

最後は主人公が新たな夢の方向性を見出し、ちゃんとハッピーエンドで締めくくってくれる。
カーテンコールでの役者たちは、みんなキラキラしていて眩しかった。
「ああ、やっぱり演劇って楽しいよな…」と、私は一人、モニターの前で感じた。
全力で演劇を楽しんでいる彼らの姿は、本当に眩し過ぎた。

以上。

ここから先の内容は読んでほしくないので、有料にしようと思う。
あくまで私個人の感想だが、観劇中に感じた不満、ダメ出し、”自分ならこうする”といった意見などが、溢れて止まらなかった。
それらはきっと、読者を不快な気持ちにする。
でも、書かずにはいられなかった。

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