はじめての「胃カメラ」キツすぎて頭おかしくなりました

最近、胃の調子が悪いので人生初の胃カメラ検査をした。

診察室に入ると待ち受けていたのは、黒い艶髪をなびかせた美人女医…


美人女医「フフ…よく来たわね…私は担当の蜜月…ヨロシク…。おなかの調子が悪いんですって…?」

俺「は、はい…一週間くらい前から胃もたれと胸やけが酷くて…」

美人女医「そう…じゃあ今日はアナタの胃の中をじ〜っくりと見てみるわね…ナカを見られるのははじめて…?」

俺「あっ、そ、そうです…」

美人女医「緊張しているのね…フフ…かわいい…。はじめてって、すっごく痛いイメージがあると思うの…でも大丈夫…苦痛が少ないように鼻からカメラを入れてあげるから…」

俺「えっ…?は、鼻から…?そ、そんな…」


今回受けた検査は「経鼻内視鏡検査」。通常、ノドからカメラを突っ込む「経口内視鏡検査」だと舌の付け根やノドにカメラが触れるため人によっては激しい嘔吐感を感じることがある。しかし、カメラを鼻から入れる「経鼻内視鏡検査」は、舌やノドにカメラが触れることもなく嘔吐感、不快感もそこまでない、今オススメの検査方法らしい。

そんな説明を受け、さっそく薄暗い個室へと通された俺…どこかムーディでアダルティックな雰囲気になんだか頭がクラクラした。


俺「しっ、失礼します…」


部屋には、別の美人麻酔科医が俺を待っていた。切れ長の目にメガネをかけている…。クールな印象の見た目なのにどこか温かみを感じる俺がいた…


俺「あっ、よっ、よろしくおねがいします…」

美人麻酔科医「麻酔科医の巴です…じゃあ…まずこのコップを飲んで…」

そう言って謎の液体を飲まされる俺。「消泡剤」といって胃の中の泡を取り除く効果があるらしい…

俺「うっ、にがっ…」

美人麻酔科医「苦い…?フフ…。じゃあ次はこのベッドに横になって…」

俺「は、ハイ…」

美人麻酔科医「それじゃあ、ナカに入ってる液体を全体になじませるためにカラダを右…左って揺らしてみて…」

俺「こ、こうですか…?(ユッサユッサ…)」

美人麻酔科医「…あっ…そんなに早くしたらダメよ…ゆ〜っくり…ゆっくりね…」

俺「す、スイマセン…」

美人麻酔科医「じゃあ次は鼻に麻酔を注入していくから…ちょっと染みるけどガマンできる…?男の子なんだからできるでしょ…?」

俺「はっ、はいっ…できますっ…」

美人麻酔科医「フフ…じゃあいくわよ…まずは右の穴から…」


チューーーーーー


俺「うっっ、っっっくっっ…」

美人麻酔科医「次は左…」

俺「うっ、あっ」

美人麻酔科医「ハァハァ…これでおしまい…よくがんばったじゃない…しばらくするとクスリがノドの奥にも染み渡ってきて少し苦しいかもしれないけどガマン…」

俺「でっ、できますっ……!」

美人麻酔科医「良い子ね…これでわたしのシンサツは終わり…じゃあもうすぐセンセイが来るから目をつぶって待ってて…」


3分後、最初の美人女医・蜜月が俺の前に再び現れた


美人女医「…おまたせ…かんそうクン…クスリの効き目はどう?」

俺「あ゛っ、え゛ぇーーーーっと…カッ…ェッ…」

(しゃっ、しゃべりづらい……?こっ、声が…?)


美人女医「苦しい…?フフフ…クスリが効いてきてる証拠よ…じゃあいよいよカメラ…入れていくから…」

俺「あ゛っ、あ゛いっ……」


ビカッ!


美人女医がそう言うと、黒光りしたカメラが目の前に現れた…隆々とそびえ立つ「ソレ」に恐怖よりもなぜか「キレイだ…」と思う俺がいた。おかしいのだろうか。


美人女医「少しだけ鼻がこすれるかもしれないけどガマンしてね…?覚悟は良い…?じゃあ行くわよ…力抜いて…?」


俺「あ゛っ、あ゛あ゛っ…」


ヌッ…!


俺「〜〜〜〜〜ッッッッッ!」


右の穴から入った「ソレ」はスルスルと鼻を通り、食道、胃と巡回していく。美人女医が言ったように一瞬だけ鼻がこすれたが、そこまでの嫌悪感はなかった。むしろ、「異物が身体の中に入る」…なに…これ…俺の中に俺以外のモノがっ…きっ…苦しいのに…気持ち良い…不快と快を同時に浴びている感覚…頭がおかしくなりそうだった。気がつくと口元からだらしなくヨダレを垂らしていた…


俺「お゛っ…お゛お゛お゛っ…かっっ……」

美人女医「ホラ…いま食道見てるわよ…恥ずかしい…?」

俺「ンンッッッ…!(こっ、こんなっ…あぁっ…)」

美人女医「んっ…若いからすっごいキレイだけど…あら…ここね…わかる…?あぁ…これは…ピーーーーね……」


病名なんて、もう、どうでもよかった。



俺「…オ゛ッッッ……オ゛ッッ…」


…意識がもうろうとしてくる…美人麻酔科医が打った麻酔のせいなのか…美人女医にナカを見られてるという恥ずかしさのせいなのか…クソッ…俺が…こんなっ…美人女医にっ……



美人…女医…?



?「ウ゛ォッホォンッッッ!えー、じゃあカメラ抜いていきますよー」


…?


目の前に突如現れる、ハゲジジイ


俺「え゛っ」


ハゲジジイ「はい、これで終了です。お薬お出ししますから待合室でお待ち下さい。お疲れ様でした」


こ、これは…?い、今までのシンサツは…?



ハゲジジイ「担当の石田です。こんにちは。えー、今日は?胃もたれが治らないということで?胃カメラは?はじめて?あっそう」

ハゲジジイ「胃カメラ痛いってイメージあると思うんですけど、ウチの病院は経鼻内視鏡って言って鼻からカメラ入れますから。口から入れるよりは痛くないと思いますよ。まぁ耐えられなかったら鎮静剤もお出しするので、言ってください」


……


小太りメガネジジイ「ああ、どうも。麻酔科医の橋本です。じゃあまずコップの水飲んでください。これで胃のなかの泡?出しちゃうから」

小太りメガネジジイ「はい。じゃあ次は仰向けになって。左右に動いてみて。あーーーあーー!そんな早く動かなくていいから!」

小太りメガネジジイ「次は鼻から麻酔入れていきますから。ちょっとウッとなるけど我慢してくださいー、あー動かないで危ないから!」


いなかった。最初から美人女医なんて存在しなかった。すべては、恐怖のあまり俺が作り出した「幻覚」だった。

いたのは、初老のハゲジジイと、小太りのメガネジジイだけ。


ハゲジジイ「はい、じゃあカメラ入れるよーー、ちょっと鼻痛いけどガマンしてくださいー」

ハゲジジイ「はい、いま食道通ってるからねーーー、あーー、あーあ、これねー、食道に炎症起きちゃってるねー、逆流性食道炎だねー、コレ」


俺「ああ…ああああっ……アァッッッ…!!あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁあああああッッッァアアアーーーーーー!!!!」


暴飲暴食にはお気をつけください


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