風との出会い②

私は、34歳になっていた。
その朝は、夏休みに入って数日後だった。
長男が小学生になり、地域の子供クラブで朝のラジオ体操を持ち回り制で行うのが慣例となっていた。
いつもよりも涼しい朝の空気を頬に感じながら集合場所へと向かって歩いた。小型のラジオと参加した子のカードに印すスタンプの入った缶の入れ物を持って私は二人の息子と向かった。真ん中の娘は眠いから嫌だと言い一緒に出ようとはしなかった。
6:20頃からラジオのスイッチを入れて皆が徐々に集まる様子を見ていた。
一人だけ高校生くらいの男の子が皆から少し離れた場所に居るのが見えた。

6時半とともにラジオ体操の唄が流れ、そして第一、第二とラジオ体操のピアノの旋律に乗って身体を動かした。終える頃には朝陽が眩しく身体にじんわりと汗をかいていた。
学校や幼稚園などから貰ってきたそれぞれのカードに出席のスタンプを押してあげた。子ども達の「ありがとう」という声が弾んでいるのがわかる。

息子たちは先に家へ帰って行ったので、私はラジオと缶の入れ物を持って歩き出した。
ふと右側に先程見かけた高校生が立っていた。その彼の顔を見た瞬間、
ー 「私はこの人を好きになる」
という言霊が閃光のごとく脳裏に走った。
え??私自身が驚いていた。
会釈を交わし、彼の横を通り過ぎてから先程の言霊を振り払うように
「いや、そんな筈はない。私は子持ちの30代なのよ。彼は高校生なのだから、そんなことは絶対にあり得ない。」
と自分に言い聞かせていた。
彼の真っ白なTシャツが私の目に焼きついていた。

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