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料理と褒め上手なパートナー
料理の上達は難しい。
努力してあれこれ作れるようになった状態で、それ以上の高みを目指すならもう「味の向上」しかない。
つまり味覚が正しく(正しくの定義はともかくとして)備わっている人間でないと上達はしない。
またそれぞれに好みの味や濃さが存在して、「おいしい」の定義をさらに難しくしている。
ずっと料理が下手だった。
おいしいものをたべたいなら、お店で食べればいいじゃない?と食のマリーアントワネットみたいなことを思っていたし実際言っていた。
上手くなる必要性がなかった。味とかよくわからない、あんなもの概念です。
それが結婚で一転する。
怖いですね、自分が作ったものを生まれも育ちも生活習慣も好き嫌いも違う赤の他人が食べるんだから。相当相手を信用してないと無理だ。なんなのだ結婚って。
本当に料理が苦痛だった。自分が興味のないものをなんで毎日やらないといけないの。
ところが夫は褒め上手だった。
たとえば薄い味噌汁を出したとする。
彼は完食してのたまうのだ「健康的な味でおいしかった!」と。
たとえば酸っぱすぎる和え物を出したとする。
彼はこう言う「いいねえ、目の覚める味だねえ」。
結果私は料理が嫌いではなくなった。自分のために料理をする気にはさらさらならないが、夫のためならやれるのだ。だって絶対ほめてくれるからね。
その代わり一定のレベルで料理の上達は頭打ちになった。褒められて満足しちゃったからそれ以上にはなりようがない。
ある日何も材料のストックがなく、レトルトカレーを出す羽目になった。
毎日ご飯を作って出すことがルーチンになってたので、なんだか申し訳ない気持ちまでしてくる。
恐る恐る
「ごめん何も材料がなかった、レトルトカレーならどれがいい?」
と自分用にストックしておいたカレーを数種類見せてみた。
夫はこう言った。
「どれもおいしそう!カレーを選ぶのがうまいんだねえ!」
なんということだ。
私の料理が上達しないせいで、夫の褒め能力が天元突破していたのだ。
これがいいことなのか悪いことなのかはわからない。
今後の人生で答えが出てくると思います……。
*ヘッドの写真はめちゃデカハンバーグを作った時のやつです。表向きは子どもを驚かすためだが本当は全部丸めて整形するのがだるかったから。フライパンに敷き詰めて焼いた。中まで火を通すのに中火で20分かかった。
追記
私が不器用ながら頑張って折り紙を折っていたら、端がずれてしまった。
おかしいな?ちゃんと折ってたのにな?とひとりごちたら夫がすかさず
「不良品だ!メーカーに問い合わせだ!」と言い出した。
誰か夫の外れたタガをはめてください。