デジタルアーカイブ構築・公開用wordpressプラグインの開発 1
概 要
小規模の博物館・図書館・郷土資料館などで安価にかつ容易に、デジタルアーカイブをインターネット上で検索・公開するために開発をしたWordPressのプラグインを開発した。
このプラグインは「JPEG・PNG,PDF画像,動画,IIIF対応画像などの多くの種類のデジタルコンテンツの表示」,「全文検索に加えて,アーカイブ一覧,カテゴリー別一覧,詳細検索や国土地理院の地図上のマーカから検索」,「利用目的に合わせメタデータを容易に設定」,「詳細検索,検索結果や個別表示画面を簡単に作成可能」,「複数の投稿者がブログの投稿と同じようにデータを入力可能」などの特徴を持っている。
開発の動機
2012年ごろに総務省が「知のデジタルアーカイブ -社会の知識インフラの拡充に向けてー」という報告書が発表され、「知のデジタルアーカイブに関する研究会」提言にデジタルアーカイブの構築のためのガイドラインなどがありデジタルアーカイブの構築が提言されました。
また、2022年4月の博物館法の改定で博物館の事業に博物館資料のデジタルアーカイブ化が追加されたように、博物館等でのデジタルアーカイブの構築が期待されている。
東京国立博物館、国会図書館、国立公文書館等でデジタルアーカイブがあるが、川上らがは「デジタルアーカイブの公開を開始した後に運営側が直面するのが,保守・メンテナンスの継続問題である」と述べているように、構築・維持に多大な費用と人員がかかるので、小規模な組織で導入するのは難しいと感じた。(時実らは「『地域住民参加型デジタルアーカイブの推進 に関する調査検討会報告書』で紹介されて いるアーカイブ活動18件のうち、デジタルアーカイブが現在も公開さ れているのは3件にとどまり、それらも更新 は停止している。」)
そこで、小規模の美術館・博物館・図書館や地域資料を扱う機関・団体でも安価かつ容易にデジタルアーカイブの構築・公開ができることを考え、LAMP(Linux,Apache,MySQL,PHP)環境上の既存のオープンソースソフトウェアを活用することで開発コストも下げられ、長期的な安定的運用ができると考えられるので、を目指すことができる。そこで、LAMP環境で動作し、導入実績があるオープンソースソフトウェアWordPressを利用するデジタルアーカイブシステム用のプラグインを開発した。
プラグインの概要
開発したプラグインは、知のデジタルアーカイブに関する研究会の提言「デジタルアーカイブ構築のガイドライン」の「システム機能仕様」の次の5項目をほぼ満足するものである。
メタデータおよびコンテンツを1件ずつ画面から登録する機能。
検索対象とするメタデータ項目について、項目を定めずにすべて検索を行う「簡易検索(全文検索)」機能。
検索対象とするメタデータ項目を複数指定でき、AND/OR条件を指定できる「詳細検索」機能。(AND条件のみ指定)
資料整理のため、および利用者の利便性のために、資料分類などの階層をたどりながら資料を閲覧する機能。(カテゴリー分け)
登録されたメタデータおよびコンテンツを業務担当者が確認し、編集できる、確認の結果、「公開承認」か「非公開」の判断を行い、それをシステムに登録できる機能。
また、デジタルアーカイブにおいて画像を公開し共有するための国際的な枠組みが作られ(International Image Interoperability Framework、略してIIIF)、採用が広まりつつあることに対応するために、公開されているマニフェストを利用して画像表示を行えるようにしてある。
特 徴
多様なデジタルコンテンツを表示
JPEG・PNG、PDF画像、動画、IIIF対応画像などの多くの種類のデジタルコンテンツの公開が可能です。
多彩な検索機能
全文検索に加えて、アーカイブ一覧、カテゴリー別一覧、詳細検索(メタデータをもとに検索する)やGoogle Mapや国土地理院の地図上のマーカから検索が可能
メタデータを容易に変更できる
利用目的に合わせメタデータを設定できる。また、詳細検索項目、検索結果や個別表示に利用するメタデータを容易に変更できる。
簡単なデータ入力
WordPressを利用しているので、ブログを投稿と同じようにデータを入力可能である
閲覧者制限可能
WordPressを利用しているので、ユーザ権限を簡単に設定できる。
検索画面を簡単に作成可能
検索機能はショートコードにしてあるので、簡単に検索画面を作成できる。
デジタルアーカイブ公開プラグインの機能
開発したプラグインは、文化的、歴史的な写真や文書をデジタル化し、蓄積・公開するためのものでで、画像にメタデータを付加したデジタルデータをWeb上に蓄積し、誰でも簡単に表示・検索できるシステムの機能を持ったものです。
具体的には、
1 ホームページ閲覧ソフト(ブラウザ)を利用してデジタルアーカイブの蓄積・閲覧・検索ができる。
2 蓄積するコンテンツは複数枚の画像(jpg,png,gif)及びPDFが可能。
3 写真にメタデータを付加し、デジタルアーカイブとして蓄積することができる。
4 デジタルアーカイブは複数の投稿者がインターネットを利用して入力できる。
これらの機能を実現するために、カスタム投稿タイプとカスタムフィールドを用いることとした。
カスタム投稿タイプのコンテンツに画像を追加し、カスタムフィールドにメタデータを入れることにより1コンテンツとし、検索・表示の対象とした。
1コンテンツに複数画像、PDF、YouTube、IIIF対応マニフェストによる画像などを表示できるようにした。(書籍のように画面の拡大が可能なモードもある。)
検索機能として、全文検索に加えて、
1 デジタルアーカイブ一覧覧
現在蓄積されているアーカイブの一覧を表示する。表示されるものはサムネイル及びタイトルとする。
2 カテゴリー別一覧
カテゴリーを選択し、そのカテゴリーを持つアーカイブ一覧を表示する。
3 詳細検索(メタデータをもとに検索する)
検索対象のメタデータを入力し絞り込み検索を行う。入力形式は「テキスト」、「ドロップダウン選択」、「チェックボックス選択」がある。
4 カテゴリー別詳細検索
カテゴリーを選択し、そのカテゴリーを持つアーカイブ一を絞り込み検索を行う。
5 地図から検索
地図上に表示されたピンをクリックすることにより検索する。
検索結果表示画面
検索結果のタイトル、サムネイル、メタデータを1ページ10枚表示する。
10以上結果がある場合には前後にページ移動可能。
写真をクリックすると個別ページに移動しでアーカイブを表示する。
個別アーカイブ表示例
個別のアーカイブは画像とメタデータを表示する。
表示は次の6種類ある。
1 写真表示(複数画像表示・選択可)
2 動画表示(YouTubeの動画あるいはmp4動画の表示)
3 書籍表示(多くの画像を複数のグループに分け表示速度の向上をはかる、openseadragonで表示するので、拡大可能)
4 文書表示(openseadragonで表示しているため拡大表示可能)
5 IIIF対応画像表示(マニフェストに基づきMiradorで表示するので、拡大可能)
6 PDF表示(PDFファイルを表示)
おわりに
WordPressを利用したデジタルアーカイブは東京文化財研究所や佛教大学図書館で構築されているが、コンテンツはWordPressとは別に蓄積されている。
本プラグインはコンテンツ・メタデータの管理・検索・表示すべてをWordPrssで行う特徴を持っている.
LAMP環境でのデジタルアーカイブ用CMSとしてOmekaがあるが,画面デザインであるテーマの作成などが容易でなく、日本語の情報も少ないので構築には外注する必要があることが多い。
本プラグインを利用するWordPrssはLAMPのCMSとして普及しており、多くのレンタルサーバでクイックインストールが可能であり、日本語の情報も多く学習コストも低く、利用できるプラグインが多いことから容易にデジタルアーカイブを構築できると思われる。
このことから小規模な美術館・博物館・図書館や地域資料を扱う組織において,職員がレンタルサーバーなどを利用してデジタルアーカイブを安価で構築・運用できる可能性がある。
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