(2) 提出資料/(3) 審査の内容、観点
(2)提出資料
審査資料として提出を要請される資料には、主に以下のものがあります。IPO準備段階により異なりますが、基本的には、いずれの資料も基準決算期及び申請期がカバーできる期間の資料の提出が求められます。上場申請時に取引所に提出する資料も基本的に同様です。
①監査役会規則、監査役監査基準
②監査計画書(重点監査項目、監査スケジュール、監査役間の役割分担等)
③監査役会議事録(各会議で使用した資料も含む)
④監査報告書
⑤監査調書(監査活動の記録)
IPO準備段階によっては、まだ正式な監査役会設置会社になっておらず、任意の「監査役協議会」や「監査役連絡会」等の名称で社外監査役との連携を行っているケースもありますが、その場合には、その会の規程、及び議事録の提出を求められます。なお、上場申請時には、監査役会設置会社あるいは監査等委員会設置会社等の上場申請が認められる機関設計での運営実績が求められますので、名称は「協議会」や「連絡会」であっても、実態としては、監査役会設置会社の監査役会と同様の運営実績を残していくために、協議会や連絡会の規程についても、監査役会に準じて制定し、会の運営、議事録の作成を行っていく必要があります。
(3)監査活動に対する審査の内容、観点
上記監査役面談でヒアリングされる項目のうち、監査役の監査活動に対しては、概ね、以下の観点から審査をされることになります。
①常勤監査役の常勤性
②監査役としての適性、就任経緯
③監査計画の策定(監査目的(重点項目)、対象範囲(全部署、子会社も)、監査役間の役割分担
④常勤監査役による日常的な執務の状況、監査の実施(監査調書の作成)
⑤監査役会の運営状況(位置づけ、タイミング、頻度、議事録の作成)
⑥取締役会における発言の状況
⑦業務執行取締役への問題提起・提言の状況、上記の問題提起・提言への対応状況
⑧内部監査、会計監査との連携等
⑨社外取締役との連携、情報共有状況
上記審査の観点について、それぞれ具体的内容を述べていきます。
①常勤監査役の常勤性
常勤監査役は、他に常勤する職務を兼務しておらず、会社の就業時間中は、その会社の監査役としての職務に専念できる状態になっていることが求められます。証券会社からは、出社頻度や勤務時間等が確認されます。現在では、WEB会議の利用等により必要な監査活動ができれば、必ずしも毎日出社しなければならないということではありませんが、最初から週3日勤務するという条件や、月のうち何日間は別の仕事のため出社できないという制約がある条件での就任は認められません。
②監査役としての適性
証券会社からは、監査役全員の経歴、就任経緯を確認されます。監査役の独立性という観点から、経営者との利害関係の有無、経営者に対してはっきり直言できる関係性にあるかなどが問われます。
また、それぞれの監査役について、過去に不祥事を起こした会社に関与したことがないか、どのような知見、専門的知識があるか、それぞれの知見に応じた監査役間の役割分担があるのか等が確認されます。また、会社がそれぞれの監査役を招聘した理由の説明も求められることになります。
(続く)
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Ⅰ 上場審査と監査役
(1)証券会社の審査の目的(続き)
(2)証券取引所の審査の目的
2.監査役の業務に関しては、具体的にどのようなことが審査されるのでしょうか?