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【実測】 THE LUNCH BOX

会社に持っていくお弁当箱を探していた際に、中川政七商店で出会ったお弁当箱。アルミのコンパクトなボックスで、サイズ感が非常に魅力的。ヘアライン研摩により金属らしい質感を出しながらも、触ってみるとすべすべでコーナーの手触りも良く、温かみを感じるデザインになっている。

「分解」21.01.04_the お弁当箱_アートボード 1 のコピー

「分解」21.01.04_the お弁当箱_アートボード 1

THE LUNCH BOXは本体と蓋の2パーツで構成されている。コーナーは丸い形になっているが、その部分にハイライトが走り強調されるため、程よい可愛さにとどまっている。組み合わせた時は、蓋に隠れて本体が全く見えなくなるためシンプルな箱に見える。
また底面(上面)部分のコーナー形状は単純な曲面ではなく楕円になっている。

「分解」21.01.04_the お弁当箱-09

「分解」21.01.04_the お弁当箱-02

組み合わせた状態の平面図と立面図。
上から見ると82:119=1:1.45とほぼ白銀比になっている。蓋と地面の隙間は2.4mm程度だが、そこに覗く本体はカーブ部分のため下から覗かない限りは、蓋しか見えないようになっている。
特徴的なのはヘアラインが長手ではなく短手方向に入っていることだ。長手方向に入れてシャープさを際立たせるのではなく、あえて短手に入れることでシャープさを打ち消している。また、蓋の上面と長手の側面にかけては連続したヘアラインが刻まれている。大きな面同士が繋がって見えるため、一つの塊としての印象を作るディテールの一つになっている。

「分解」21.01.04_the お弁当箱-03

「分解」21.01.04_the お弁当箱-04

アルミの厚みは1mm程度。本体と蓋のクリアランスは0.5mmとかなりギリギリだが、中央あたりでは蓋に若干の傾斜がついており1.5mm程度まで広くなっている。
この隙間のおかけで蓋が開きやすくなっている。
また小口も最小限の研磨に留められており、非常に美しく見える。


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底面(上面)のコーナー形状を予想した図面。多分こんな形状のはず。
図示しているように、2つの円が連続したような楕円形上になっている。側面側のカーブが強く、底面(上面)側はゆるいカーブになっている。
THE LUNCH BOXにおいてはこのディテールが一番の核である。それは機能と意匠が密接に結びき、全体への影響力も大きいからだ。
まず機能の面では、底面積を大きくしてお弁当箱としての収納力を向上させることが挙げられる。そもそものサイズが非常にコンパクトであるため、ディテールの工夫がお弁当箱としてのクオリティを大きく左右している。
意匠としてはアルミの美しさの強調に寄与している。THE LUNCH BOXには余分な装飾がないため、素材をいかに美しく見せるかが非常に重要なポイントだ。縁ギリギリまでを緩やかなカーブとすることで、面として見える範囲をできるだけ大きく広げている。また側面と切り替わるエッジを立たせることで、面が際立つようにしている。一番大きく見える底面(上面)を主役として引き立てるコーナー形状になっている。

「分解」21.01.04_the お弁当箱-06

「分解」21.01.04_the お弁当箱-07

本体の平面図と立面図。蓋と比べて一回り小さな寸法だが、高さだけは同一だ。


全体として、非常に手数が少なくシンプルな老成したデザインだ。
素材の選択、ヘアラインの入れ方や、コーナーの形状、サイズ感など最小限の要素を上手く組み合わせることで、アルミ自体の美しさや温かみのある表情を引き出し、日本らしさを醸し、機能性も満たすなど、非常に豊かな成果を獲得している。
お弁当箱に白米を敷き詰め、最も大きな規格サイズの梅干しを置くと日本の日の丸と同じ比率になるといった遊び心も加えられている。
それらはTHEらしいと感じると同時に、無印良品に近しいものも感じる。しかしながら両者の違いは明確でTHEはいわゆる普通を表現し、無印は普通の更新を目指している。THEがファッショナブルで、無印は職人的とも言えるかもしれない。
日の丸の遊び心はそれを象徴している。

唯一苦言を挙げるとすればやはり、レンジを使えないのは面倒臭いということだ。
結局、私はレンジが使えるものに買い替えた。温蔵庫のない社会人が日用するには少し覚悟が必要だろう。

実物はこちらから
https://the-web-shop.jp/collections/all-products/products/the-lunch-box

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