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【実測】BALMUDA 梱包箱

先日、BALMUDAのトースターを結婚祝いに頂いた。
郵送で届いたのだが、その梱包の仕方が非常に魅力的だったので実測を行った。

「分解」20.12.29_BALMUDA パッケージ_アートボード 1

まず目に入るのはダークグレーでやや光沢のある、上質な外箱だ。上蓋の中央にはやや小さめのロゴが白抜きに入っており、それ以外には特に飾り気のない外観になっている。第一印象はシンプルかつ上質で、Appleの箱を連想した。

触ってみるとはややザラザラとした質感で、厚紙(種類は不明)で作られていることが肌でわかる。ディテールを観察してみるとエッジの部分は紙を折っているため、面取りのような形状になっている。その面は光が強く反射し細く長いハイライトとなっているため、シャープな印象を際立たせていると感じた。加工の特性を活かした巧みなデザインだ。
また、素材が紙であるためマルッとしたたわみ形状が随所に見られる。その曲面が柔らかな影を作り、温かみを感じさせる。第一印象と触れて感じる印象とのギャップに驚く。この若干のユルさ、ラフさ、隙があるような感覚はAppleの箱には感じなかった要素だ。BALMUDA製品の印象ともどこか通ずるものを感じる。

「分解」20.12.29_BALMUDA パッケージ-02

最も面白いと感じたのは、梱包の仕組み。紙の外箱の中にはダンボールのきっちりとした箱が入っている。紙の外箱は上蓋と本体の2つで構成されている。
梱包の仕方としては、まず本体をダンボールにそわせて折っていき、最後に上蓋で封をするというもの。本体を止める仕組みは上蓋しかないため、上蓋をとると花が開くように本体がバサッと展開し一枚の紙の状態に戻る。それと同時に現れるダンボールも普通のものではなく、BALMUDAのロゴやトースターのイラストなどの様々な飾りが施されており、開けたときのワクワク感を丁寧に演出している。

梱包を1から10まで全てオリジナルに作り切るのではなく、組み合わせによってデザインしている点にオリジナリティを感じた。流通品のダンボールとオリジナルの紙箱の組み合わせは、性能の役割分担や、製造負荷の低減といった可能性を感じさせ、捨て方やリサイクルの仕方が直感的にわかるのも良いと感じた。

そして何より作り込み過ぎないラフさがちょうどいい。
ラフといってももちろん、演出やブランドとの相性はきっちりと考えられているが。

「分解」20.12.29_BALMUDA パッケージ-03

上蓋の寸法。中央のロゴはほぼ中央に配置されている。
上方距離過大の錯視的にはやや上に配置するのが定石だが、実測では1mm下に配置されている(測り間違いか?)。しかし、特に違和感は感じなかった。

「分解」20.12.29_BALMUDA パッケージ-04

外箱の側面図。紙の折り込みの勝ち負けから、紙のたわみが生じる面と生じない面が別れている。上の図面はたわみが正面から見える面で、もう一方がたわみの横が見える面。たわみを正面からみるとその上下に柔らかな影が発生する。ダークグレーの色と上手く調和するため、影だけが目立つことはなく、影も紙の質感のように感じる。また、たわみの側面をみると紙が膨らんでいることがよくわかる。

プロダクトは時折、中身や製法が全く想像できないブラックボックスと化すが、このディテールからは誰もが直感的に理解できる。

「分解」20.12.29_BALMUDA パッケージ-05

膨らみ方の観察。上蓋はたわみの頂点がちょうど中央あたりにあるのに対し、本体は上側を蓋で抑えられているため、たわみ頂点はやや下よりになっている。膨らみ具合も大きく異なる。

「分解」20.12.29_BALMUDA パッケージ-06

本体の展開図。非常にシンプルだが、実は2枚のパーツに別れている(色分けしている部分)。2枚に分けている理由は、素材となった紙の既製寸法上だと考えられる。特注でサイズを作るよりも、2枚を別々に製造しはり合わせる方がローコストだったのだろうか。もしそうであれば、サイズから生じる製造手間よりも素材感を優先していることがわかるディテールだ。細かい話であるが、貼り合わせ部分は紙の角が斜めに切り落とされてている。紙を折っていく際に邪魔にならないようにするための普遍的ディテールだ。
また、中央にはJust for you!とのメッセージが隠れている。ちょうどダンボールが乗る部分なので気づかない人がいてもおかしくない。粋な仕掛けだ。

唯一疑問なのは、紙の折り目が一部部分だけミシン目になっていることだ。図の右上に一箇所だけがそうなっており、その他の部分はスジ入れ加工になっている。
素人目には全て筋入れ加工にする方が合理的に見えるため、何かしらのデザインが隠れているはずだ。

「分解」20.12.29_BALMUDA パッケージ-07

2枚のパーツの貼り合わせ部分の拡大図。30mm程度ののり代で貼り合わせられており、非常に強固に接着されている。また、折り目にちょうど合わせずに2mm程度ずらして貼り合わせている。ちょうどに合わせると、ノリがはみ出したり運搬時に引っかかって剥がれる危険があるからだと推察できる。


「分解」20.12.29_BALMUDA パッケージ-08

上蓋の展開図。山折りになる部分だけがミシン目の折り目になっている。

「分解」20.12.29_BALMUDA パッケージ-09

折り曲げ加工の様々な工夫の詰まったディテール。
こうした部分は変えようのない普遍的なディテールに感じるが、実際どこまでオリジナリティを入れ込む余地があるのかは気になるところだ。


BALMUDAのようにプロダクトのデザインが優れているブランドは、それそのものに焦点が当たりがちだが、本当に優れているものはその裏側の見えない部分までデザインされているものだ。今回の梱包箱のように隅々までブランドらしさや、上質な体験を行き渡らせようとする意思を持っている。その際に、重要なのは魅力的であることに加え、ブランドらしさを表現できているかそしてそれをユーザーが感じとれるかどうかだろう。その視点でいえば今回の梱包箱は、文句のつけようのない優れたデザインだ。


実物が気になる方は購入されて見てはいかがだろうか。


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