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【実測】 山崎実業 蓋つきティッシュケース リンL

タイトルにあるティッシュケースは、ACTUSで見つけ購入したものだ。マットな質感と粉体塗装のザラザラとした感触、手に持った時のスチールの重量感に好感を持ったことがきっかけ。

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外観形状の特徴は、ケースの角に大きくRをとっている点だ。

サイズは12R。それは、ぱっと見た時の雰囲気を柔らかくするとともに、安全性を高めることに貢献している。スチールは重量があるため、鋭い角を作ると怪我の危険性がある。またRの部分で光が照り返るため、マットでざらざらとしたやや重めの外観に対する、アクセントとしての役割も果たしている。

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ティッシュケースを構成するパーツは

①天然木の蓋

②スチールの本体

③ゴムの足

蓋は落とし蓋のようになっており、本体に入れたティッシュケースの上にのせる仕様になっている。そのためティッシュケースのサイズ違いにも対応が可能だ。たまにもらうサイズ違いのティッシュも安心して使用できる。

ゴムの足は本体に対しておそらく接着剤で固定されている。本体の表面は塗装で凸凹としているため摩擦係数が低く、机の上などにおくと滑りやすく、傷もつきやすくなっている。ゴムの足はその滑りや傷つきの防止を果たしている。また、厚みは2mmあり、なおかつぱっとは見えない箇所に付いているため、本体が若干浮いているように見える。下に影も出るため、外観全体に軽快な印象を与えている。

余談であるが、ゴムの設置箇所には若干の揺らぎがある。見えない箇所だからか誤差の許容範囲が広めに設定されているようだ。


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本体の平面図。スチールの厚みは1mm、全体のサイズはw260 d130と2:1とコントロールされた寸法体系になっている。

また底面を注視すると、小さな穴が空いていることがわかる。正確な用途はわからないが、おそらくスチールの成形時に必要な穴なのではないだろうか。下にあるゴムが、ちょうど穴を塞ぐように張り付けられているため、念入りにチェックしないとなかなか気づくことができない。ゴムをつけることの意味が丁寧に設計されている。ただし穴から若干ゴムの接着剤が見えるため、少しだけ残念である。(これをなくすのはかなり難しそうだか)


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蓋つき版の平面図。蓋と本体の隙間は2.5mm程度。蓋を端に寄せると5mmほどの隙間になるため、かなり目立つ。クリアリングとしてもかなり広めの印象なので、2.5mmである理由には考察の余地がある。

【考察】 深さのある本体設計のため、蓋を取り出す時に斜めになることが想定される。斜めになってもスムーズに取り出せるようにするためには、2.5mm必要だったのではないか。もしくは好みか、材料取りの都合か。

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本体の側面の図。角のR部分に影ができるため、本当のサイズよりも細身に感じるようになっている。また、箱の底側の角にも1Rもしくは1C程度の面取りがしっかりととられている。

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こちらは断面図。蓋の位置を自由に動かせるため、サイズの異なるティッシュにも対応することが可能。ちなみに鼻セレブの大きなタイプは高さが90mmほどのあるため、入らなかった。

そのほかのティッシュもある程度高さは規格で揃っているため、この機能は意図的なものではないあるいは、重要度は低い機能なのかもしれない。

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蓋の図面。その側の角は本体と同じく12Rだが、内側のくりぬき部は8Rとなっている。

蓋は合板に突き板を貼って仕上げている。横から見ると、5枚の板が積層しており、その表と裏の両面に突き板が貼られている。ひっくり返して使用しても、天然木が表に出てくるようになっている。

このティッシュケースを2つ持っているが、蓋の木目柄はそれぞれに異なる(同じロットのもので有ればかなり似ると思われるが)。工業化で量産しながらも、自然のランダムさや多様さを取り込むことで、一つ一つに異なる表情が生まれている。

また商品を買ってから気づいたのだが、くりぬき部のバリ取りが甘く、少しだけ残ってしまっている。それは残念だったポイントだ。

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本体のフチの断面形状。厚みは1mmと薄いが、若干のRがかけられており、触れても怪我をしないようになっている。


全体的に、素材の特性に合わせて無駄のない適切な加工がなされている。色気を出す部分と抑える部分の選択が明確で、丁寧にデザインされたものだということがわかる。

小技に頼るわけではなく、素材感(粉体塗装のざらざらとした質感)や、組み合わせ(スチールの重みとと木の軽さの組み合わせ)、全体のプロポーションといった、デザインの根幹的なところできちっと勝負しているところに、非常に好感を感じる。

特にそれを強く感じるのは、相反するものを調和させている点だ。スチールと木、量産と多様さ、重さと軽さ。そうした複数の要素を調和させながらも、すべて素材選択によってのみ生み出されているため、シンプルさを保っている。

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