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洋楽の「邦題」名作(#2)アルバートハモンド「カリフォルニアの青い空」

 いつの日かクラスの女子にモテまくることを夢見て、フォークギターの練習(お手本は吉田拓郎)に明け暮れていた中学1年生の春休み。
 深夜放送でこの曲が流れてきて、「おっ、この曲もギターでジャンジャカ弾けたらかっこいいんじゃないか。」と思ってたら、瞬く間に大ヒットとなっていました。
 昭和の当時はJASRACがうるさくなかったから、商店街でもこの曲が流れていたし、どの曲のラジオ番組もこの曲をかけていました。とにかくリスナーからのリクエストが多かったんでしょうね。

(21) カリフォルニアの青い空/アルバート・ハモンド It Never Rains In Southern California/Albert Hammond - YouTube

 本国アメリカでは中くらいのスマッシュヒットで終わったんですけど、日本はもちろん、香港、シンガポールでもメガヒットとなった。

 あるFM番組のDJが「この曲の原題は、It never rains in Southern California つまり、南カリフォルニアでは雨が降らない っていうんですよ。」と言ってて、「そうか、そんな晴れの日ばっかりの国ってあるんだな。いいよな、なんで俺はこんなじめじめした気候の国に生まれたんだよ」と思ったものだ。

 サビの  It never rains in Southern California の部分だけは、中学生の自分でも理解できる歌詞だったけど、それ以外の部分の歌詞は、いったい何について歌ってるのかがわからなかった。
「きっと、カリフォルニア良い処、一度はおいで」みたいな内容なんだろう、と サル中学生は能天気に考えてました。

 当時売れっ子アイドルだったアグネスチャンや南沙織がこの曲をカヴァーして英語で歌っていたので、「やっぱりこの曲はいい曲なんだ」という確信を持つようになり、弾き語りの練習にも熱が入ったものでした。

 歌詞の内容を理解できたのは高校になってからです。
pour  という動詞は、「(お茶などを)注ぐ」または「土砂降りの雨が降る」という意味で、発音の問題では頻出、ということを習ったんですが、その時、この曲が脳裏に浮かびましたよ。

 ハリウッド(南カリフォルニア)で俳優として成功することを夢見て、遠い国(アルバートハモンドの祖国の英国のことか?)からはるばるやってきた若者が、成功のキッカケも掴めず、食うにも困って街をうろついています。
 落ちぶれた姿でいるときに、偶然、故郷の知り合いに出会ってしまって「俺はすべて順調だよ。」と見栄を張るんですが、「俺と会ったことは、みんなには内緒にしててくれないか」と頼んでます。
 
 南カリフォルニアでは雨の日はない、って聞いてた。でも来てみたら毎日土砂降りだよ。

 どちらかといえば夢破れた若者の心情を歌った悲しい内容の曲ですから、邦題をつける担当になった方もきっと悩んだでしょう。

 「カリフォルニア無情」×
 「土砂降りの心」 ×
 「放浪のハリウッド」×
 「傷心の街角」 ×
 「夢のカリフォルニア」
    これなんか〇だけど、すでにママス&パパスのヒット曲が存在
 
地獄の生みの苦しみの果てに

 雨が絶対に降らない→ 晴れの日ばかり → 「青空」 ということで、

  「青空の南カリフォルニア」 〇 だけど、ちょっと言いにくい
  それで七五調になるように
  「カリフォルニアの青い空」 ◎  決定!

 やはり日本語は、七五調がしっくり来ますよね。
 この語呂の良い邦題があってこそ、ラジオ番組でもオンエアが増えたのだろうし、大ヒットにつながったと私は信じています。

 DJ「じゃあ、次の曲行ってみよう。イトネバーレインズインサザンカリフォルニア」これじゃあ、リクエストのハガキも書けないですよ。

 DJ「じゃあ、次の曲行ってみよう。カリフォルニアの 青い空!」
すごく言いやすいし、覚えやすいですよね。
  まさに「邦題」の勝利ですね。

 EPIC レコードJAPAN の担当者がこれに気を良くしたのかどうかは知らないが、アルバートハモンドのその後のシングル盤で、日本でだけ流行った曲 があるんですが、そのタイトルが For the piece of all mankind  
 
 直訳すると、「全人類の平和のために」。
 どこかの宗教法人のスローガンみたいなんですが(実際は失恋の歌)、なんとこの曲の邦題が「落ち葉のコンチェルト」。

「全人類の平和のために」→ 「落ち葉のコンチェルト」 

 いやはや、これは 荒業 としか言いようがないが、この曲が「日本でだけヒットした」、というのは、邦題の荒業ネーミングが寄与した結果なのではないか、と思うわけです。もちろん、楽曲自体も素晴らしいですが。

(21) 落ち葉のコンチェルト - YouTube

カーペンターズの数ある名曲のうちで自分が一番好きなのは「青春の輝き」ですが、この曲を創ったのはアルバートハモンドです。

ソングライターとしても素晴らしい人ですね。 

 

  

  

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