マークカード導入で働き方改革を!
韓国ドラマを見ていると、高校の定期考査のシーンが出てくることがよくあります。
「スカイキャッスル」はセレブたちの受験戦争がテーマのドラマだから、定期考査の場面描写は多い。
「ブラックドッグ」も、先生側の視点からの定期考査 をテーマにしたトピックが印象的でした。
「お、韓国は日本よりもずっと進んでるよな」と思うこと。
全教科の定期考査がマークカード回答方式なのです。
おそらく各学校に採点処理の機器が導入されていて、教務部で一括して採点作業と成績処理作業を行っているのでしょうね。
だから、それぞれの教科担当教員は、問題作成と試験監督業務まではするけれど、マークカード採点業務と成績処理には関わらなくて、得点結果だけを受け取るのですね。
先生が赤ペン持ってセッセと答案採点しているシーンは韓国ドラマでは出てこないわけです。
今日は大阪府の府立高校入学選抜試験の日です。
昨年まで現役の英語科教員として30年以上も入試選抜業務には関わってきましたから、入試現場で起こる様々なミスやトラブルは、軽微なものからちょっと深刻なものまで、たいがい経験してきました。
現役の教員のほぼ全員が心底、感じていることは何だと思いますか?
「入試問題は全部マークシート方式にしてくれ」 ですよ。
「そんなことはない。記述式問題を増やして、論理的思考力や文章力を問う必要があるのだ。マークシートでは、中学生の学力が深くは測れない。」
と「本気で」主張する教員は、少なくとも現場にはいないはず。
教育委員会に行けば多数いらっしゃるのかもしれないですがね。
最近は不合格になった受験生から、自分の答案の開示 を求められるケースが増えているため、答案用紙に○×を赤ペンで書くことすら禁止なのです。
最初の採点者の赤ペンが 受験生の鉛筆の答えに重なってしまうと、あとから他の採点者が再点検をする際に、採点ミスを見逃がしてしまうからです。薄い字の答案とかもありますしね。
さて、「答案回答にペンの印を一切残してはいけない」という縛りのもとで、あなたは次のような問題の採点を4人チームで担当するとしましょう。
(問題)
タイから来たばかりの交換留学生のコーンさんは「お花見」に興味があるそうです。
そこであなたは、来週の週末に大阪城公園に誘おうと思います。コーンさんへ送る英文メールを25単語程度で書きなさい。
さて、この英作文問題の配点は6点満点。
「採点基準は公平になるように留意して、部分点を認めよ」と、採点のマニュアルにはあります。
こんなの、ひとつとして同じ答案はないわけで、そもそもどんな英語なら6点満点をさしあげるのか。採点の基準ポリシーをまずは明確にしておく必要があります。
いきなり4人それぞれが勝手に採点し始めると、あとでえらい面倒なことになるだけです。ここはじっくり話し合い。
もちろん高校によって受験生の英語学力レベルが全然違いますから、A高校では満点がもらえた作文回答も、レベルの高いB高校では1点しかもらえない、なんてこともあります。
たとえば、
Let'go HANAMI in OSAKA JO KOEN. We will be happy.
Let's eat takoyaki. I love tik-tok. I love Dance. I love K-POP.
という回答
突っ込みどころはいっぱいある幼稚な英語ですが、私ならWe will be happy. の部分は少なくとも文法的には正しいし、2点は差し上げてもいいかと思います。
(でも、こんなのゼロ点だろ、という教師もいます)
じゃあ、これはどうでしょうか。
Shall we go to Osaka Casle Park next Sunday by trein? It's famos for chelly blossam. We can enjoy walking and tryng local food there.
なかなか秀逸ですね!
しかし残念ながら、スペルミスが6か所もあります。
採点基準の打ち合わせの段階で、「1つのスペルミスで1点減点」、というふうに取り決めたならば、この作文はゼロ点です。
結果的に、TAKOYAKI とかTIK-TOK の英文が2点。
英文はほぼ完璧だが、スペルミスが6つあった英文が0点。
うーーん、なんだかなー!
これではバランスを欠くのではないか、ということで全体の採点基準ルールをもう一度見直し、その後全部の答案用紙を再びチェックし直します。
はい、こんなの丁寧にやってたら1日で終了するわけないですね。
これを数百枚の答案について、3日くらいかけて4人チームで担当します。
翌日の新聞には、「作文は思考力と文化理解を問う良問だった」みたいなことが書かれていて「ふざけんなよテメー!」と叫ぶのがデフォです。
入試は「選抜」するのが目的なんだから、とにかく客観的な方式で十分。
洞察力とか思考力などは、実際に入学してから授業や行事を通じて鍛えればいいことです。
マークシートで機械が採点した結果なら、だれからも文句もでませんって。
採点もあっという間に終わります。これこそ「働き方改革」でしょ。
「入試は公平な環境で実施するよう配慮する。公平を期すため、回答はマークカード方式で、機械が採点。」これで十分。
万博もいいんだけどさ、こういうところにこそ府の予算をつぎ込みましょうよ(変な利権が発生するのはイヤですが)。
3日もかけて採点業務して、その期間中、教員は校内に缶詰。部活動も当然禁止。
莫大なエネルギーの浪費でしかありませんぜ。