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報告書には書けません。

出版社の営業は「ナニを売るひと」なのか

「油を売ってないでちゃんとしやがれ。」
昔のオジサンたちはそういって売上のあがらない部下を叱責していた時代がありました。

「油を売る=怠けている、無駄話をしている」という意味ですね。
江戸時代には行灯用や髪を纏めるための油を売るひとがいて、売り子はお客さんとの雑談を長い時間していたそう。
これは当時の油は粘度が高く、落ちきるまで時間がかかっていたからとか。

ということは、油売りの雑談は商売に必要不可欠。話が上手くないとお客さんは苦痛に感じ、他の油売りにとられちゃう可能性も。
しかもそこで得られる情報が商売に役立つこともあったでしょう。
油売りは積極的に雑談をしていたのです。
それを踏まえると、冒頭の昭和オジサンはこう言うべきでした。

「あなたの仕事は短時間でひとつでも多くの商品を売ることだ。
だからひとりに時間をかけて商売しなければならない油売りのようなやり方ではなく、効率的に仕事をしないと売上は伸びないよ。」

ワタシの役割は何なのか

では出版社の営業はどうでしょう。編集者みたいに本を作るわけではなく、かといって書店さんじゃないから本をお客さんに売るわけでもない。
まして医療関連書だと実際に自分のプライベートや仕事に使うわけでもない。

「美味しいです」
「便利な機能がついてます」
「いざというとき安心です 」
「あなたの資産になります」

こんなコロシ文句は説得力ゼロ。そもそも自分が使う予定の無いモノを売るって…

だから、出版社の営業マンが看護学校の先生方や学生さん、看護師の方、書店さんに会って話す内容は決まっています。

「著者、編集者がどういう意図、想いで作ったのか」

これだけです。その話を聞いたかたが、じゃあちょっと読んでみよう、じゃあ教科書になるか検討しよう、じゃあ店頭でこんな展開をしてみよう、と思えるように。

つまり出版社の営業は、本文からはなかなか読み取れない著者と編集者の熱量を、同じくらいのアツさを持って語り継ぐ役割なんです。

おっ、何かウマイこと言えてきたぞ。もうちょい。

アノヒトは信頼できるのか

もうひとつ、医療関連出版社ならではなのが、読者と直接会話できるからこその役割、ということがあります。

それは読者が求めていることをいち早く知ることができるということ。
最近出版社でよく言われている「マーケットイン(顧客志向型商品開発)」を日々実体験しているんです。

そこで得た情報を会社へフィードバックすることで、その後の出版やセミナー企画につながることも多々あります。
また、訪問先で紹介してもらったかたが、後にヒット作を生みだす著者になったりすることも。

ワタクシ事で恐縮ですが、その昔知り合った学校の先生が本を書いてくださり、ベストセラーになりました。
本の「はじめに」に自分の名前が載ってるのを見たとき、本作りに参加できた喜びでからだが震えたのを今でも覚えています。

けど一朝一夕でウマイ話は転がりこんできません。日々いろいろなかたと出会い、情報を提供し、相手の悩みや望みを聞きまくる。そして信頼を得たさきに嬉しいご褒美が待っています。

自分たちの商売だけをツラツラ語っていては関係性は築けません。
幾度となく繰り返してきた「ためになる雑談」があってこそ。
この上に強固な信頼関係が出来上がってくるんです。

出版社の営業のこと、少し理解いただけたでしょうか。結構考えて頑張ってるんですよ。
もちろんこれ以外にも、宣伝、販促、卸会社、書店との交渉、在庫管理、学会対応、等々。本を売るためにいろんな地味な作業をしています。
やっぱりお金をいただくって大変なこと。手は抜けません。


で、最初の問い。出版社の営業はナニを売ってるのか。営業マンはこう答えましょう。

「愛と信頼を売っています。(照笑)」

照れ笑いまでがワンセット。
忘れちゃダメですよ。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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忘れちゃダメですよ。

※あくまでも個人の感想です。営業の方は専門家の指示のもと行動をしてください。

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