ネットビジネスのセミナーに行ってみたら稀代のコメディアンに会って、その人に立たされた話
お久しぶりです。
前回の投稿からかなり日が経ってしまいました。
今回はツイッターのDMでネットビジネスの勧誘を受け、
言われるがままにセミナーに行ってみた話をしたい思います。
どのようにして行くことになったかの経緯は前回の記事を読んでいただけると助かります。(読まなくてもこの記事は楽しんで頂けるこち亀方式です。)
さて、セミナー当日。
呼ばれたのは梅田駅から少し歩いた所にある、ビル街の一室。
外から見ても分かるくらいに、欲が蠢いていた。
部屋に着くと大学生くらいの年齢の男女が受付をしていた。
佐野「アンさん(仮称)の紹介で参りました、佐野と申します。」
受付大学生「お待ちしておりました。それでは800円になります。」
・・・・
え?
聞いてないよぉ!!(ダチョウ倶楽部さんより拝借)
お金かかるの?この講義!!
800円?!近所の定食屋の大盛とんかつ定食に匹敵するそんな大金を急に出せと言われても・・・
なんかそこらへんの料金説明も前段階でない時点でマジで狂った組織だと思ってしまった。(素直にすぐに払いました)
800円も払ったんだ。きっちりネタにさせてもらいますぜ・・・
会場内に入ると、男女100名ほどが入り乱れて会話を楽しんでいた。
ほぼ全員笑顔と言っていいだろう。
どうやらこのセミナーは初心者だけではなく
この組織に所属する全員が参加する者らしく
この組織の人間はこの月に1回のセミナーでしか顔を合わせないことがほとんどらしい。(上層部は頻繁にBBQなどをやっているらしいが)
セミナーはこの組織の交流の場でもあるということを知る。
なんか思ってた雰囲気と違った。
もっと目が虚ろになって「金、カネ、KANE」と亡者のように彷徨う人間の集いだと思っていたが実際は違うらしい。
すると私を勧誘してきた張本人、アンが私の元にやってきた。
「来てくれたんだー!!嬉しい!!」
彼女のこの笑顔を見れただけでも800円の価値はあるか・・・
「かんくんと同じ大学の子もいるよ!ほら!こっち!!」
彼女に案内されるがままに部屋の奥に行くと
「いかにも」なネットビジネスマンたちが胡散臭さ100%で出来上がった笑顔でこちらに話しかけてきた。
「君、お笑い芸人目指してるんだって??」
あれ?
なんでこいつらそのことを・・・
いや、目指してると言っても当時(大4)の私はまだ周りに芸人になるだなんて公表していなかったはず・・・
しかし彼らが知るルートは1つしかない。
アンだ。
きっと前回のカフェテリアでの密会でポロッとお笑いをやりたいという旨のことを言ってしまっていたのだろう。
全く、油断の隙もあったもんじゃない。
佐野「・・・えぇ。まあ。はい・・・」
ビジネスマンA「え?ほんまやったんだ!!すげぇ!!!」
ビジネスマンB「漫才?!コント?!」
佐野「いや、まだそんな本格的にh・・・」
ビジネスマンC「(食い気味に)そーなんや!!すげぇー!!!ピン?コンビ??」
佐野「コンビがいいなぁって思ってます」(ピンじゃあ漫才できねぇだろ)
ビジネスマンA「え、ちょっとテレビとが出たら教えてや!!お笑いめっちゃ好きやから!!」
ビジネスマンB「サインもらっとこー!!!」
ビジネスマンA「いや、気早いわ!!!」
佐野以外「wwwwwwwwww」
排泄物以下のやり取りが行われたところで全員に着席の指示が出された。
私はそこでアンやビジネスマンABCと別れ、席に案内された。
両隣は見るからに冴えない感じのメガネ君。
なんかさっきまで話をしていた人達と明らかに空気が違った。
伏し目がちで各々会話もせずにメモ帳とスマホを握りしめ、セミナーが始まることだけを待っている、そんな雰囲気だ。
私は察した。
そうか。
この組織の中でも食うものと食われるのがいる。
きっとこの子達は搾取される側の人間なんだ。
メガネA「始めまして」
佐野「あ、はじめまして。。。」
メガネA「今、ツイッターどんな状況??」
佐野「え?」
メガネA「ツイッターだよツイッター。」
こんな唐突にメジャーSNSの状況を聞かれて、逆にスムーズに返答してくれた人間が過去にいたのだろうか。
話を聞く限り、この組織ではまずツイッターでの活動を命じられるらしい。
メガネA「まずはとにかくフォロー、そしてフォローを返してもらった相手にDMを送るんだ。こんな活動やってますってね。でも勧誘するだけのアカウントにしてはいけない。日常生活のことも呟いて親近感を湧かせるんだ。そしてその日常生活の呟きの中にしっかり稼げているアピールも織り交ぜる。」
水を得た魚のようにこの組織におけるSNSの使い方を説明してくれた。
きっとこのメガネAの人生にとって初めての後輩ってやつなんだろう。
私は大人しく返事のみに徹した。
メガネB「今月まだ30人にしかDM送ってねぇよ・・・」
メガネC「俺も。。。」
どうやら1ヵ月にDMを送らなければならないノルマがあるらしい・・・
どうりで無謀と思える勧誘DMをみんな送り付けてくるわけだ。
あれは誘いに乗ってくれることを望んでいるのではない。
ただただノルマをこなすために送り付けているのだ。
そこで返事が返ってくれば御の字と言ったところなのだろう。
そんなビジネス勧誘の裏側を少し知れたところでセミナーが始まった。
司会「それでは今から定例会を始めます。本日、お話をしてくれるのはXさんです!!!」
聴衆「うぉーーーー!!!!!」
地鳴りのような歓声が梅田に鳴り響く。
どうやらこのXはこの組織のカリスマ的存在らしい。
Xがゆっくりゆっくり登壇する。
「えー、どうも。Xです。久々に人前で話すので、緊張してま~~~すw」
聴衆「wwwwwwwwww」
尋常じゃないくらいのウケ方。
生まれて初めて中川家の漫才を生で見た時のそれと同じくらいのウケ量。
狂ったように笑う聴衆に相当な温度差を感じながらも私はXの話に耳を傾けた。
X「実は僕~~、先日誕生日でして~~」
一同「おめでとうございます!!!!」
X「また一つ、年を取ってしまって・・・おじさんになってしまいましたw」
一同「wwwwww」
Xの一挙手一投足がウケるウケる。
ここまでのカリスマになれば、変に捻るよりも擦られ尽くしたボケだけで十分なのだろう。
X「誕生日ってことで、買い物行こって誘われて~~。あっ、彼女にじゃないですよ?僕彼女いないんで」
一同「wwww」
X「誕生日なんだから豪華なモノ買え買えうるさく言われちゃってw」
一同「wwww」
X「それで買ったこのバッグ。25万円」
一同「おぉーーー!!!!(拍手)」
ここで今日一番の盛り上がりを見せる。
みんなXに釘付け。
X「お金ってさ、使えば使うほど増えるのよ。これは本当に使ってる人には分かるはず」
一同「うんうん」
X「だからさ、今自分が何にお金使いたいか、全員に発表してもらおうと思う。言葉に出すことは大事だよ。」
一同「ザワザワ」
なんだか不穏な空気になってきた。
私は今日、座って話を聞くだけという条件で来ているのだ。
ただでさえ800円払うという条件以外の要求もされているのに・・・
しかしこの場でXに逆らうものなどいない。
10分ほどしかXの話を聞いてない私でも分かるくらいに全員がXに対して尊敬と畏怖を覚えているように感じ取れた。
Y「じゃあ俺から言います!!!」
見るからに陽キャ大学生らしき男が手を挙げた。
X「またお前かよ~~~ でもそーゆー所・・・大好きw」
一同「wwwww」
火を見るより明らかにXのお気に入りなのだろう。
その男は私の席と左右対称に位置する場所に鎮座していた。
つまりその男から横に流れてきたら割と早めに私に順番が回ってくる。
お気に入りだがなんだか知らねぇが私まで巻き込むなよ糞大学生。
Y「俺は!!時計買いたいです!!!」
X「ブランドは?値段は??色は??」
Y「え?」
X「買いたいものを具体的に考えるんだよ。そしたらそれを買うための具体的なやるべきことが見えてくる。」
Y「ろ、ロレックス!!」
Yは関西圏にこだまするくらいの大きな声で高級ブランドの名前を叫んだ。
拍手喝采。
この組織では夢を語ることでのし上がることができる。
そんな一幕を見たような気がする。
X「次」
女A「私は・・・海外で豪遊したいです!!!」
X「海外ってどこ?アメリカ?イタリア??」
女A「マ…マカオ!!!」
X「いいね!じゃあ豪遊ってのはカジノかな??」
女A「ハイっ!!!!」
X「そのために君はなにをする?!」
女A「1日100人にDMを送ります!!!」
X「いいね!!拍手!!!!!」
一同「鬼拍手」
だんだん、熱を帯びてきた。
夢を語る
Xが夢の具体性を聞く
具体的な目標を叫ぶ
全員がその雄姿に拍手を送る。
この繰り返しで会場の盛り上がりは最高潮にまで駆け上がった。
X「じゃあ!次!!!!」
そう。
私の番が来た。
組織全員の視線が私に集まる。
スッと立ち上がる。
ここで下手に時間を使うことは得策ではないことは重々承知していた。
こーゆーのはサラッと終わらせるのが流儀だ。
なによりここで下手に印象付けることなどしてはいけない。
「えっと、僕は~」
私も自分がなにを買いたいかを言おうとしたその時だった。
???「あっ!!芸人さんだ!!!!」
会場全体の時が止まった。
私にもいったい何が起きたのか理解が追い付かなかった。
とりあえず声のする方を見る。
するとそこには・・・
さっき少しだけ話をした
胡散臭いビジネスマン大学生ABCがいたのだ。
そう。
このビジネスマン達が私の正体を全体の前でバラしてしまったのだ。(この時は芸人志望であり、芸人ではないです。)
一気にどよめく会場。
Xの目は素晴らしい獲物を見つけた時の肉食獣のそれと同じだった。
X「え??なになに?!芸人さん???」
一同「ざわざわ」
X「今日はロケかなにかですか??w」
一同「wwwwwww」
佐野「え、いや・・・」
X「せっかくですから!自己紹介お願いしますよ!!」
最悪だ。
印象に残ることだけが嫌だったのに
印象にしか残らないいじられ方をしてしまっている。
当時、舞台経験などなかった私であるが
いかにこの組織のメンバーの目線が期待に満ちたものであるかは
容易に伺い知れた。
X「さあ!遠慮なく!!芸人さん!!」
なにより厄介なのは
この組織における明石家さんまさん的ポジションに位置するこの男であった。
この組織においてこの男こそがルールなのだ。
この男にロックオンされた私がこの場を生きて乗り切る選択肢は1つ。
この男を気持ちよく笑わせること。
しかし、そんなことしてみろ。
たちまち私はこの男のお気に入りとなり
この組織を抜けるに抜けられなくなる。
どちらに転んでも生き地獄なのだ。
佐野「あ、、、あの。佐野って言います。芸人とかそんなんじゃ・・・」
X「え??声小さくな~~~いっ?!?」
一同「wwwwwwwwwwww」
耐えるんだ。
耐え忍べ。
ここで下手に反抗する意思を見せてみろ。
そもそもこの組織が完全な白だと確定したわけではない。
黒い組織だったとして
このXの機嫌を損ねるような真似をしたら
マジで黒い人が出てくる可能性だってあるんだ。
佐野「えへへ・・・」
X「吉本とかでやってるの??」
佐野「いや。。。その、まだ今は大学生でして・・・」
もう逃げるしかない。
ここでギャグとかネタを平気で振ってくるようなネジの外れた野郎だこいつらは。
芸人でないことをしっかり主張して大人しく終わろう。
もういいや。。。
ここで如何につまらない、ノリの悪い奴だと思われても。
私は結局、Xの機嫌を損ねない程度に芸人であること否定するという道を選んだ。
するとXから言われた言葉は想像を絶するものだった
X「大学生でもお笑いやってる人はいるよ??大学生だからまだやらないってのは負け組の発想だ。ライバルたちはもうすでに勝負を始めてるんだよ??」
いや、真っ当過ぎる!!!真芯で捉えてきた!!
あのテンションからこんなガチ説教されることなんてある?!?
佐野「すみません。。。」
謝っちゃったよ!!!!!
X「うん。お笑いって大変な世界だと思うんだ。だから覚悟がないとできないよ。」
薄っぺらい説教だってことは分かるが、そんなことは微塵も感じさせない表情でXの話を聞いた。
ここで少しでも反抗的な表情を見せる方がよっぽど惨めなように思えたから。
それから話は展開され
「夢をもつこと」的な演説が始まった。
もはやターゲットは私ではなくなったものの
座るタイミングを逸した私はスタンディングで彼の話を聞いた。
面白いくらいに次に出てくる言葉が予想できる退屈な話であったが
組織の人間たちは如何にも目から鱗と言った表情で頷いていた。
結果、夢の話が長引いてセミナー終了時間を迎えてしまった。
後半、30分くらい私は立ちっぱなしだった。
これがテレ朝アニメ製作スタッフの集団だったら完全に私のあだ名は「のびた」になっていただろう。
セミナー終了後。
私のもとにアンがやってきた。
ふんわりと感想を言った記憶がある。
もう帰りたさがMaxに達していた。
元々、興味がないセミナー。
その上で、一番いじられたくない形で自分の夢をいじられ
挙句、30分も立たされて毒にも薬にもならない説教を聞かされたのだ。立ちっぱなしで。
アンにまた来てねと言われ
はい、とかなんとか返事をして会議室を出ようとしたその時であった。
「佐野君!!ちょっと待って!!」
Xだ。
「さっきはなんかごめんね!!俺、本当に芸人さんって尊敬しててさ!だからこそなんか熱くなっちゃってw。
本当に応援してるから!!」
なるほどな。
こーやって「アフターフォローできる自分」に惚れ込むタイプの人間か。
あんな大勢の前で一人の人間を立たせて説教した時点でそんなフォローなんの効力もないことを誰も教えてあげないのな。
佐野「いえいえ!すごく刺激的でした!!ありがとうございました!!」
そう言って去ろうとしたその時だった。
X「佐野君の話、もっと聞きたいな!!この後、ごはんでもどう??」
佐野「いや、、この後は。。。」
X「梅田でさ、一番高い焼肉。どうかな??」
もはや可視化できそうなくらいに虫唾が走った。
佐野「すみません!!洗濯物とかあるんで!!!!」
私は走った。
たぶんだけどピークの時のメロスくらい走った。
自分でも道理に合わない用事だと思った。
洗濯物って・・・
欲にまみれた梅田の街を私は走った。
貴方と食べる高級焼肉よりも洗濯物の方が優先順位が上なんで・・・
最後の最後で奴のプライドを少しだけ傷つけてしまったかな・・・
ネットビジネスの組織の人間と直に触れ合って感じたことは
彼らのお金への執着。
そして稼ぐこと以外への圧倒的なリスペクトの低さ。
この2点に尽きた。
文章でどれだけ表現できたか分からないが芸人と言う職業やサラリーマンのことを完全に下に見ている発言が散見された。
確かに私の稼ぎは非常に少ない。
でも芸人という最高に楽しくて生き甲斐を感じる仕事と仲間、お笑いの現場で出会う全ての人に誇りを持っている。
半沢直樹も言っていた。
「どんな仕事をしていても、どんな会社で働いても
自分の仕事にプライドを持ち、日々奮闘し、達成感を得ている人こそが勝ち組である。」と。
あの時、感じた感情を忘れたくなくて
ここに記しました。
ここまで読んでくれた方。本当にありがとうございます。
またよろしくお願い致します。
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こちらコンビの。
これからも末永く応援よろしくお願いします!!!!