遠藤協

ドキュメンタリーと民俗映像の企画・制作・配給。上映企画などもしています。岩手三陸が舞台…

遠藤協

ドキュメンタリーと民俗映像の企画・制作・配給。上映企画などもしています。岩手三陸が舞台の映画『廻り神楽』監督・プロデューサー。映像民俗学の実践。新作は台湾で撮影中。

最近の記事

「東京空襲資料展」

《2021年3月11日に「東京空襲資料展」を見て、facebookに書きつけていたメモをnoteに転載します。》 10年目の3月11日は東京芸術劇場内で展示中の「東京空襲資料展」を観て過ごしました。1996~99年度にかけて撮影された東京空襲体験者330人の証言ビデオが、公開されないまま20年以上も倉庫にしまわれ続けているという東京新聞の下記の記事(3/10)をみたからです。 【東京大空襲の証言ビデオ 20年以上放置 300人超の証言が封印の恐れ 都平和祈念館計画凍結で】

    • 「小早川秋聲-旅する画家の鎮魂歌」展

      「小早川秋聲-旅する画家の鎮魂歌」を観ました。世界各地に遊学した「旅する画家」としてのはじめての大規模な回顧展です。 特に画業を学ぶため中国への渡航は複数回に渡り、大陸の広大な情景を写し取っています。1931年に満州事変、37年に日中戦争がおきると、戦地に何度も赴き、従軍画家として数多くの戦争画を残しました。広大な大陸を舞台に、秋聲が好んだという夜景や黄昏時の兵士を描いた作品が印象的です。 最近発見されたという『虫の音』は、疲れた兵士がおもいおもいの格好で眠る様子を描いて

      • 『明日をへぐる』今井友樹監督

        先日、試写で『明日をへぐる』を拝見しました。土佐和紙の原料となる楮(こうぞ)をめぐる高知県の山里の人々の暮らしを記録した今井友樹監督の最新作。山肌を利用した楮栽培、共同作業による収穫や皮むき作業をとおして、山里が育んできた結的なつながりの大切さを描きます。 作中では、戦後の拡大造林政策が楮栽培を基調とした山里の経済を変質させたことを指摘します。現在、楮生産や和紙産業が全体に消滅の危機にあることを心配しながらも、結の作業が持つ豊かさと楮の繊維の結合力を重ね合わせて明日への希望

        • 『説経節・飯能の嵐 渋沢平九郎の最期の二日間』無料公開中

          説経節の三代目・若松若太夫さんと撮影した短編映像をYouTubeにて無料公開中です。昨秋の二日間にわたって飯能の周辺を巡り、幕末の飯能戦争で命を落とした渋沢平九郎の最後の足取りをなぞりました。 今期の大河ドラマ「青天を衝け」でも渋沢栄一が渡仏の際に立てた見立て養子である平九郎が、壮絶な最期を遂げるシーンが放送されたばかりなので、ご存知の方も多いと思います。 幕府軍の一派「振武軍」を率いた平九郎は、飯能の戦闘で敗走し、官軍に追われて越生黒山の山中で自刃します。 その首は越生

        「東京空襲資料展」

          「イザイホーと映像の時代」連続上映&トーク参加者募集中

          「イザイホーと映像の時代」連続上映&トーク 沖縄久高島の成巫儀礼イザイホー。 50年以上にわたり、数々の映像作家が情熱を注ぎカメラを回した。 その作品群を、はじめて一望のもと上映する。 制作関係者の証言を聞き、記録映画の制作、公開、そして継承について考える。 そんな連続上映&トークを開催することになりました。 沖縄・久高島に情熱を注いだ野村岳也、北村皆雄、岡田一男、姫田忠義、大重潤一郎、葛山喜久監督らの映像作品を一望する、はじめての試みです。 第1回は7月25日(日)

          「イザイホーと映像の時代」連続上映&トーク参加者募集中

          藤井光「爆撃の記録」展

          原爆の図丸木美術館で開催中の藤井光「爆撃の記録」展を見てきました。 東京大空襲と戦争記録の継承のために計画された「東京都平和記念館」は石原都政下の1999年に予算が凍結されました。その展示のために収集された5000点あまりの遺物は、今も都内の倉庫にしまわれたままです。東京空襲の生存者330名分の証言映像もそこに含まれています。 今回の展覧会では、都への資料開示請求によって得られた証言者の氏名リスト(ほとんどが黒塗りとなっている)、一部の証言の概要、記念館の設計図や展示構想図

          藤井光「爆撃の記録」展

          「すごい民族誌映画がみたい!」第一夜 《修験の芸能》参加者募集中

          公益社団法人 全日本郷土芸能協会と、エトノスシネマ(民族・民俗・考古・芸能・宗教・自然の映像アーカイブ)が、共催イベントをスタートします。 題して「すごい民族誌映画がみたい!」 記念すべき第一夜は《修験の芸能》です。 山形県の出羽三山で伝えられる羽黒修験。その門外不出の秘密の修行「秋の峰」を史上初めて詳細に記録した民族誌映画『修験 羽黒山秋の峰』(北村皆雄監督/115分/2005年) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 擬似的に死を体験し、母親の

          「すごい民族誌映画がみたい!」第一夜 《修験の芸能》参加者募集中

          川本喜八郎&岡本忠成特集

          先日、イメージフォーラムにて川本喜八郎&岡本忠成特集を鑑賞しました。 川本特集では、老婆が鬼となり息子たちを襲う今昔物語のエピソードを題材にした『鬼』、熊野参詣の若僧を恋慕した未亡人がやがて蛇に姿を変える『道成寺』、2人の男から迫られた末に地獄の業火で焼かれることになった女を描く能「求塚」が原案の『火宅』をはじめ5作品。人形コマ撮りによる女の変化の表現がすさまじい。川本喜八郎はなぜこれほど女人の業と救済というモチーフにこだわったのだろう。 岡本特集も『チコタン』『おこんじょう

          川本喜八郎&岡本忠成特集

          6/19トークイベント「100年の語りにふれる 〜東日本大震災の記憶と記録の共有をめぐって〜」参加者募集中

          6/19(土)に田原町にある書店Readin' Writin BOOK STOREさんのトークイベントに登壇します。『災害ドキュメンタリー映画の扉』編者でアーティストの是恒さくらさんとの対談。 三陸を舞台にした拙作『廻り神楽』と、鯨の伝説を収集する是恒さんのフィールドワークの接点を探りたいと思っています。 ▶︎『災害ドキュメンタリー映画の扉』(新泉社)刊行記念トークイベント 「100年の語りにふれる 〜東日本大震災の記憶と記録の共有をめぐって〜」 参加申し込み受付中です。

          6/19トークイベント「100年の語りにふれる 〜東日本大震災の記憶と記録の共有をめぐって〜」参加者募集中

          『鳥の道を越えて』『坂網猟』今井友樹監督

          今井友樹監督による名作『鳥の道を越えて』そして『坂網猟』の配信がエトノスシネマで始まりました。 『鳥の道を越えて』では、ほとんど姿を消したカスミ網猟の痕跡を追って丹念に取材。身の回りの疑問から発し、やがて先人の大きな営みが姿を現していくプロセスは謎解きのようでもあり、自然科学にもコンタクトする民俗科学映画でもあると思います。 映画が終わる頃には、私たちにも大空に伸びる「鳥の道」が少しだけ見えるようになるという体験ができます。 ぜひご覧ください。 姿なきものを撮影することは

          『鳥の道を越えて』『坂網猟』今井友樹監督

          『沖縄久高島のイザイホー』岡田一男監督

          岡田一男監督が1978年に撮影した『沖縄久高島のイザイホー』のデジタルアーカイブ化の資金をクラウドファンディングで募っています。高精細のテストピースを拝見しましたが素晴しいです。ぜひご協力ください。 https://readyfor.jp/projects/izaiho?fbclid=IwAR3MbomodhTTgrbfost0VJcjcMkqcji-HgKx1IVV6K0m1vmfr3yn--ET5i8 このプロジェクトは、すでに作品化されたフィルムの他に、未使用フッテ

          『沖縄久高島のイザイホー』岡田一男監督

          『きみが死んだあとで』 代島治彦監督

          代島治彦監督の最新作『きみが死んだあとで』に、僭越ながらコメントを寄せました。最小限のカット、写真、テクスト、音楽で構成されながら驚くべき力強さをおびたナラティブの映画です。4/17よりユーロスペースにてロードショーがはじまります。  以下はロングバージョンのコメントです。  50年あまり前に18歳の青年だった者たちが口にする挫折。代島治彦監督の『きみが死んだあとで』は、泥沼化し、世間から乖離していった学生運動の参加者が語る「敗者の歴史」だ。  驚くべきは、彼らの胸の中に

          『きみが死んだあとで』 代島治彦監督

          『odoriko』 奥谷洋一郎監督

          奥谷洋一郎さんの待望の新作「odoriko」を先日関係者試写にて拝見しました。2013年から17年にかけて全国のストリップ劇場のバックステージをカメラとともにみつめています。 ひとこと「忍耐」の作品。この20年来変わらない奥谷さんらしい映画だと思いました。くわしくは追って考えます。 つい先日フランスのCinéma du Réel で二冠の快挙を達成した本作ですが、諸事情により劇場公開は未定だそうです(これも奥谷さんらしい)。劇場公開を強く望みます。 試写会のあと、監督とと

          『odoriko』 奥谷洋一郎監督

          『緑の牢獄』 黄インイク監督

          黄インイク監督が7年の歳月をかけて完成させた労作『緑の牢獄』が傑作でした。ポレポレ東中野で4月3日から公開が始まりました。 普段、映画の初日初回に行くことは滅多にないのですが、必要を感じて観にいきました。 以下所感です。 琉球列島の「辺境」であり、「日本」と「台湾」の境界上に揺れ浮かんできた西表島。かつてこの島の炭鉱では沖縄本島、日本本土、そして台湾から連れてこられた労働者が、モルヒネ漬けの過酷な労働下に命を落としたという。いまも島の炭鉱集落の跡に無数の死者の霊が(祀る

          『緑の牢獄』 黄インイク監督