言葉を愉しむ。①
言葉に取りつかれた日々を送っているといったら言い過ぎですが。もちろん深刻な話ではなく、言葉の持つ「遊び」の要素の発見を面白がっているに過ぎません。例えば掛詞の多い日本語の面白さは、古来より和歌や俳句といった文芸として伝えられてきました。まずはそんなお話から。
花の色は 移りにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに
この小野妹子の歌が傑作と言われる所以は、「経ると降る」「眺めと長雨」の掛詞が活かされているところにあります。上手い!そうきたか!でこの歌が好きになった人は私だけではないはずです。近代でも、
太平の 眠りを覚ます上喜撰 たった四杯で夜も眠れず
この狂歌では、銘茶の「上喜撰」を「蒸気船」に、「四杯」の「杯」は船を数える単位にかけ、ペリー艦隊の4艙の蒸気船を指しています。粋ですね。
言葉遊びは、現代でも広告コピー作品などの傑作を生んでいます。
私が敬愛するコピーライター一倉宏さんの作品に「愛に雪、恋を白。」がありまして。電車でこのJR SKISKI キャンペーンの車内吊りポスターに遭遇した時の衝撃は今でも忘れられません。ダジャレが単に居酒屋の「おやじギャグ」ではなく「作品」に昇華しているわけで、まるでギャグ好きのわが身が肯定されたような歓びを感じたものでありました。
てなわけで。以下、掛詞的な単純ギャグを思い付きメモからいくつか。
・都会の温泉利用者は「ほんのスーパー銭湯」とか。
・ご声援とカンパに感謝します。「5000円、ありがとうございました。」
・町の名前間違えるなんて。「地名的だ。」
・あなた「そう言えば、総入れ歯」だったっけ。
・近所の神社には豚が祀られている。「ポークジンジャ」だわな。
・緒形拳が飼っていたのは「大型犬」か。
・中国インバウンドの相乗作用で大繁盛。まさに「シナジン効果!」
・あの髪の長い生意気野郎、「長髪的」じゃないの。
・4人でカフェに入ったら、水を5つ持ってきた。「誤認だ」っつーの!
・コピーライターって書く仕事なだけに「隠し事」が多いらしい。
・港区の海岸にいる筋肉マン、「浜マッチョ」。
・ニューヨーク市で「入浴死」。
・交差点にある「紅茶店」。
・軟便は「何遍も出る」。
・拐われた時に「皿割れた」。
・パクチー。日本人が食べても「コリアンだー」。
・お食事券を使った「汚職事件」。
・理不尽な「李夫人」。
・ヤクザと医師と「ヤクザイシ」。
・台湾の離れ小島で李登輝を書いた。「離島記」。
・宿泊に「四苦八苦」。
・橘氏と「立ち話」。
・絶対に遅刻しない「定刻主義者」。
などなど。
あ~、酒の席で思いついた「傑作」ギャグは数知れず。もちろん記憶の彼方にすべて消えてしまいましたが。歳と共に加速する「もの忘れ」との闘い。そうだ、こんど思いついたらスマホのmemo機能をちゃんと使って記録しよう!忘れてなければ、ね。
言葉と無縁の日はありません。今日も言葉と愉しく過ごすいい一日でありますように。次回は「回文」のことなど書いてみたいと思います。