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太宰治の命日はなぜ「桜桃忌」と呼ばれるのか

太宰治の小説の愛読者にはよく知られていますが、
命日の6月19日は「桜桃忌」と呼ばれています。

桜桃とはサクランボのことです。
6月に旬を迎える果実です。

しかし6月に旬を迎えるのはサクランボだけではありません。
ヤマモモやビワやアンズも市場に出回る季節です。

なぜ桜桃忌なのでしょうか。

その理由は、太宰治の絶筆となった小説にあります。
最後の小説の題名が「桜桃」なのです。

太宰治の晩年の小説は、ほとんど自身がモデルです。
痛々しいほど自虐的であり、自嘲的です。

生まれてきたことを恥じながら日々を生きています。
読んでいて本当に心が痛みます。

もう少し家族のことを考えてあげられないのかと思いますが、
考えてあげられないからこそ悲惨な最期を遂げたのでしょうか。

「桜桃」という小説も、太宰治自身が主人公です。
例によって、居酒屋で酔いつぶれています。

珍しく季節のサクランボが出されますが、
太宰治は、つまらなそうにそれを食べます。

家に持って帰れば幼い子どもが喜ぶことはわかっていますが、
それさえしようとは考えません。

もうこのときは自身の死を覚悟していたのでしょうか
「桜桃」を脱稿した直後に入水自殺しています。

遺体が発見された日が6月19日でした。
奇しくも太宰治の誕生日でした。

もっと幸せに生きることもできたはずですが、
結局、救われることはありませんでした。

太宰治のお墓は東京三鷹の禅林寺にあります。
毎年、桜桃忌には法要が営まれます。

お墓にはたくさんの花とサクランボが供えられます。
鮮やかなサクランボの赤い色がとても悲しく映えます。


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