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サーロインの「サー」とは本当に称号か

イギリスの叙勲制度に「ナイト」という勲位があります。
中世の騎士に由来する名誉ある位です。

ナイトの勲位を授かるときは、国王の前にひざまずき、
肩をサーベルで軽くたたいてもらいます。

このとき使うサーベルのことを「騎士の剣」といいます。
古くから行われてきた「アレコード」と呼ばれる儀式です。

ナイトが授与されると「サー」の称号が与えられます。
日本語では「卿」と訳すことがあります。

たとえば、アニメ「きかんしゃトーマス」に登場する
トップハム・ハット卿がそうです。

原作の英語では、サー・トップハム・ハットといいます。
もちろん架空の人物ですが。

実在の人物では、イギリスの首相を二度にわたって務めた
ウィンストン・チャーチル卿が有名です。

サー・ウィンストン・レナード・スペンサー・チャーチル
というのが正式な名前です。

サーの称号は、文学や音楽や演劇やスポーツなどの各分野で
活躍した人々にも与えられています。

たとえば、チャーリー・チャップリン、ポール・マッカートニー、
ショーン・コネリー、コナン・ドイルなどが知られています。

ちなみに「スターウォーズ」に登場するダースベイダーも
なぜか吹き替えではダースベイダー卿と呼ばれています。

いつナイトの勲位を授けられたのでしょうか。
そもそもひざまずいたりするのでしょうか。

あのダースベイダーがサーベルで肩をたたかれる姿は
とても想像でません。

そのような危険な行為をすれば、たちまちライトセーバーの
餌食になってしまいます。

同じく、ナイトの称号が与えられていないのに
サーを名乗るものがあります。

それが、牛肉の「サーロイン」です。

もともと「ロイン」とは牛肉の部位のことを指します。
サーロインはロインの一部分です。

国王がサーロインを使った牛肉料理を食べたときに、
あまりの美味しさにサーの称号を与えたといわれます。

その国王とは「わがまま王」として悪名高い
イングランド国王ヘンリー8世のことです。

晩年は肥満に悩まされたと伝えられていますから、
相当な美食家だったのかもしれません。

しかし、ヘンリー8世がサーの称号を与えたという説は、
史実ではなく、俗説に過ぎません。

サーロインの「サー」はもともとフランス語が語源です。
「上」を表す前置詞の「シュール」から来ています。

ロインもフランス語の「ロンジュ」から来ています。
腰の部位を表す言葉です。

「シュール・ロンジュ」が「サーロイン」に転訛したと
一般的には考えられます。

「上」とはいっても、「外側」の意味もあります。
ロインの外側の部位がサーロインです。

「サシ」と呼ばれる網状の脂肪が入った霜降り肉です。
肉質は柔らかく、脂の甘みがある極上の牛肉です。

ステーキに使われることが多いのですが、
すき焼きやしゃぶしゃぶにも適しています。

口の中でとろけるような至福の味わいが感じられます。
国王でなくても、サーの称号を与えたくなります。


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