ひろうすの語源
関西では「がんもどき」という呼称は使いません。
「飛竜頭」と書いて「ひりょうず」または「ひりゅうず」と呼びます。
とくに京都では「ひろうす」といいます。
京ことばは濁点を嫌い柔らかな音を好むといわれています。
たとえば湯葉は「ゆば」ではなく「ゆわ」と呼びます。
ちなみに徳川二代将軍の秀忠の五女和子が後水尾天皇の中宮となるときは、名前の読み方を「かずこ」から「まさこ」に変えました。
宮中では濁点の付いた名前が認められなかったそうです。
それを聞いた秀忠は、ではわしの名も「ひてたた」にせねばならぬのか。
何とも弱々しい名じゃのうと大笑いしたそうです。
ひろうすも京都風にひりょうずが音韻変化したものと私は考えていました。
ところが、ひろうすの方が語源としては先であることを知りました。
ひろうすはポルトガル語の「フィリョース」に由来するそうです。
フィリョースとは小麦粉を練って油で挙げたお菓子だそうです。
沖縄の「サーターアンダギー」のような揚げ菓子ではないでしょうか。
ドーナツを油で揚げてみるとわかると思いますが、多少いびつな生地でも火が通るときれいに丸く膨らみます。
がんもどきの形がそれに似ていたのかもしれません。
ですから「フィリョース」という言葉から「ひろうす」が生まれ、それを「飛竜頭」と表記して「ひりょうず」と呼んだと考えられます。
もっとも、どちらが先であってもおいしいことに変わりはありませんが。