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大根は千両役者

「スズシロ」は大根の古称です。漢字で書くと「清白」です。
食べるのがもったいないほど美しく清楚な名前です。

もちろん大根という名前も悪くありません。
とても庶民的で親しみが感じられます。

海老のむき身は片栗粉で洗うと汚れが落ちてつやつやになりますが、生牡蠣は大根おろしで洗うと汚れが落ちてぷりぷりになります。

生牡蠣を食べるときに紅葉おろしを少し添えるとおいしいです。

紅葉おろしは大根と鷹の爪を一緒のすり下ろしたものです。
まず輪切りにした大根の面に割り箸を刺して穴を開けます。そこに鷹の爪を差し込みます。
しばらくおくと鷹の爪がしっとりして大根がうっすら赤く染まります。その大根を鷹の爪と一緒にすりおろします。

下手な役者のことを「大根役者」と言います。
これは大根が消化によく「食あたり」しないことに由来しているそうです。
つまり「当たらない」役者ということです。
大根がありふれた食材だからという説もあります。

面白いことにフランス語では大根ではなくカブにたとえるそうです。
やはりありふれた素材なのでしょうか。

英語では「ハム役者」といいます。
下手な役者ほどハムレットを演じたがるとか。
あるいは誰が演じてもハムレットは受ける役だからとか。

お医者さんの場合は「大根医者」ではなく「藪医者」です。
医術の拙いお医者さんの病院には普段あまり患者さんが来ません。
ところが風邪が流行すると、人気の病院は混雑するので仕方なく医術の拙いお医者さんの病院に患者さんがやって来ます。
つまり風邪で動き出すお医者さんなので、風が吹くと動く藪にたとえています。

「チシャ医者」という演題の落語があります。
チシャとはレタスの和名です。
お婆さんがチシャと医者を聞き間違える噺です。
爆笑王とうたわれた2代目桂枝雀師匠が得意としました。

レタスは主に生で食べますが、大根は用途が広い野菜です。
サラダでもおろしても煮ても漬けても干しても美味しい食材です。
まさに千両役者ではないでしょうか。


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