
Blacklivesmatterとアメリカの大学の対応
私は現在、アメリカのペンシルベニア州にあるピッツバーグ大学というところで社会学部の博士課程をしています。日本でもミネアポリスで白人警官が黒人男性を殺したことから連日#blacklivesmatter(黒人の命は大事)と抗議の声が上がっていることは報道されていると思います。正直、黒人が警官に殺される事件はアメリカにいると日常茶飯事です。しかし、今回の事件、そして起こっている抗議デモのかつてない規模と参加している人たち(黒人だけでなくアジア人、白人も沢山います)、今まで人種問題に沈黙をしていた大企業(コカ・コーラやナイキなど)も明確に#blacklivesmatterの支持を表明するといった社会の反応をみると、アメリカにおける人種問題が大きく2020年を境に変わっていくのではないか、と勝手に感じています。
私が所属するピッツバーグ大学社会学部でも#blacklivesmatterに対する声明を学生、教員が共同で執筆して先週ウェブサイトに掲載しました。その前に、学部のウェブサイトでも大学本部の承認が必要なため、大学本部に承認を求めました。まさか、この声明が大学本部に掲載を認められると思っていなかったので驚きを感じています。
なぜそう思っていなかったかというと、
「ピッツバーグ大学自体が人種差別、白人優越主義に利して、設立され、運営されてきた」
ということを明確に言っていたからです(念の為、これはアメリカの殆どの大学に言えることです)。とにかくこういった声明が大学公式に認められるということは人種問題に取り組み難かったアメリカの地殻変動を感じます。
そして、日本では人種問題は「無いことになっている」のですが、この人種問題に取り組むという波はグローバルに広がっています。そのため、日本も人種問題に対する「アップデート」を近々しなくてはならないと感じています。そこで、私の学部で出した声明が少しでも何か役に立てばと思い、稚拙ですが、翻訳しました。
特に具体的に大学や学部が出来ることとして、シラバスの見直しです。現在多くの大学では白人研究者の論文、本を中心として教えています。それをを再想像し、黒人理論家(黒人女性、クイア、トランス、フェム理論家を含む)を中心とするとコミットしています。
私のいる学部は必ずしも、理想的な学部ではありません。沢山問題があります。でも少なくとも、こういった「理想」を掲げられるところが、問題山積のなかで着実に前にすすめる強みだと感じました。
ーーーーーー
原文:http://www.sociology.pitt.edu/news-story/sociology-departments-response-death-george-floyd
ジョージ・フロイドの死に対する社会学部の対応
ピッツバーグ大学社会学部はBlack Lives Matterと、反黒人主義、警察の暴力を終わらせるために世界中で抗議活動をする方たちに連帯します。私たちは集団での沈黙を破り、本学部の黒人メンバーとより広いコミュニティの痛みと苦しみを認め、より学びたい、またはさらに議論したい方々に場を提供します。
最近起きている出来事について
私たちは非常に多くの黒人、ネイティブ・アメリカンがCOVID19のために苦しみ、無くなっていることを認めます。私たちはアジアン・アメリカンに対する人種差別的な言葉、物理的な暴力を認めます。私たちは、アーマウド・アーベリー、ブリアナ・テイラー、ジョージ・フロイド、トニー・マクテイド、そしてより知られていませんが、同じく貴重な命が悲しくも失われてしまったこと、それが警察との関わり、人として見なされる権利のために抗議をしたために起きたことを認めます。
私たちは失われた命、彼らの家族、彼らが殺されたためにこの国の黒人に何度も蘇るトラウマのために悲しみます。私たちは人種嫌悪の標的となっているアジア系学生、教員、近隣住民、友人のために悲しみます。私たちはウィルスのために命を落とし、食べ物や保護を受けられないままでいる人々のために悲しみます。
私たちはこれらの出来事が無作為に起こったわけでもなく、単純に数人の悪い人物がやった行動だとも認めません。私たちはこれらの出来事が私たちの文化、街、学問、大学、学部、そして私たちの考えにさえ浸透してしまっている構造的な反黒人主義、白人優越主義の産物であると認めます。私たちはこれらの出来事が私たちの国が先住民を大量虐殺、大西洋横断した奴隷制度、私たちの大学における白人に特権を与える歴史と現在もそれが続いていることを認めます。
ピッツバーグ大学における私たちの役割
社会運動を研究する専門性をもつ社会学部として、私たちは5月の最終週に起きた出来事はアメリカの歴史の中で例外的な出来事ではないと理解しています。むしろ、警察やその他の人々による黒人殺しは構造的な人種差別の症状であり、警察という組織のうえで部分的に表面化しているだけです。複合的な視点でみると、アイデンティティの重なりが社会的疎外を生むと理解しています。つまり黒人女性、トランス、ノンバイナリーの人々が特に疎外されるということは、つい先週のミネアポリスのイヤナ・ディオールのリンチに表れているのです。そして社会全体に広がる人種差別が未だに残り、コミュニティに負の影響を与えているのです。
ピッツバーグ大学は白人優越主義の制度から除外されているわけではありません。事実、その上に作られ、警察の暴力を生み出す抑圧的なシステムに利益を得て、続いているわけです。反人種差別、反黒人主義に戦わなくてはならないのは、そのうちのいくつかの学部ではありません。学校全体が取り組まなくてはなりません。私たちはこの大学、学部、個人でのこの困難な仕事に単なるリップサービス以上に進まなければならないのです。この仕事は私たちの学部のドアの外だけで行われるのではありません。私たちの学部でも反黒人主義と人種差別が大学、学問領域に組み込まれ、暗黙のもしくは明白な形で起きていることから逃れられていません。
アカデミアそして学問領域としての社会学はアメリカを引き続き影響する構造的な人種差別から除外されているわけではありません。高等教育機関はその奉仕し、教育すると言っているコミュニティにおいて白人優越主義を維持する有益な役割を果たしています。私たちはアントン・ローズが、ピッツバーグ大学警察の元警官に殺されたこと、ピッツバーグ大学における警察のやり方は、社会全体にはびこる人種差別から引き継がれたものだと認めます。今の時点での自己満足は危険です。私たちは大学警察への資金提供を止め、武器を放棄させ、解散することを求める国中の学生と教員に加わります。学者として、私たちは私たちの仕事をより公正な未来に資することに努力します。
私たちは、警察からのバックラッシュやトランプ大統領による扇情的な行動が通常ではない、当然ではないことを認めます。連邦、州、地域レベルの決定は物理的、心理的な苦しみを、正当な抗議を表現する権利を行使するあらゆる人種のアメリカ人に起こしています。
私たちは黒人そして褐色人(black and brown people)に国が下した暴力に共犯することを拒否した人たちと共にいます。不正義への抵抗を悪者扱いする人種差別的な制度組織に抵抗を続けます。私たちはまた学部生および大学院生の授業にて人種差別反対主義的な教授方法にコミットメントします。私たちは人種への根本的な理解がバランスのとれた教育を提供でき、学生が動揺の時期に世界に入っていく準備を整えると信じます。
私たち社会学部の次なるステップ
私たちは学部生、大学院生の社会学理論コースの指導教官で会議を行い、シラバスを再想像し、黒人理論家(黒人女性、クイア、トランス、フェム理論家を含む)を中心とするようにします。
私たちは秋学期のオンラインコースのシラバスについても再度見直します。古典的社会学理論(学部生コース)、社会階層化(大学院生コース)が、黒人学者、とくにクイアやフェミニスト分野の学者が中心となるようにします。
私たちは、社会学専攻の学部生用の「法律、刑事司法、社会プログラム」の試験的な取り組みのなかで、人種差別反対主義、クイア、フェミミニスト、警察、裁判、法律の投獄に対する批判を中心にすることをコミットします。
私たちは、若者のための反暴力プログラムの研究、およびキャンパスにおけるセクシャルハラスメントと暴力に立ち向かう新たな大学総長のタスクフォースにおいて、反投獄、人種差別反対主義の研究、プロジェクト、視点を中心にすることにコミットします。
私たちは次の取り組みについて、共に着実に進める努力することにコミットします。コミュニティの説明責任を果たし、変革的正義のためのダイバーシティ、インクルージョンプログラムと公平性、紛争解決、制度文化的な仕組み作りは進行中です。
私たちは今日の地域およびグローバルな危機に対する人種差別反対主義、人種正義、人権、変革的アプローチについての学部およびキャンパス内でのプログラムを作ります。これはピッツバーグ大学キャンパスならびにコミュニティリーダーが関わるような、外部の講演者、パネルディスカッションを含みます。
最後に、私たちはピッツバーグ大学に対して、大学警察への資金提供中止、武器放棄、解散を要望します。
リソース(訳注):以下リンクを貼れなかったので、元サイトを参照ください。
あなたが支援をするのに役立つかもしれない反黒人主義、白人優越主義に立ち向かう組織のセレクション
Pittsburgh's 1Hood
Pittsburgh’s The Wellness Collective
Urban League of Greater Pittsburgh
Black Visions Collective
Reclaim the Block
North Star Health Collective
PUMP
Minnesota Freedom Fund
Urban League Twin Cities
Organizations Collecting Bail Funds by City
Bukit Bail Fund of Pittsburgh
Defund 12
学び、そして他の人とシェアするリソース:
A list of anti-racism resources
A piece on 'Supporting our Black Colleagues’
A piece on ‘10 Ways for non-Black Academics to Value Black Lives’
An Op-Ed entitled ‘Racism Didn't Kill George Floyd. Anti-Blackness Did’
Professor João Helion Costa Vargas’s (open access) book, The Denial of Antiblackness
A Feminist and Queer Syllabus for Black Liberation
A piece on why ‘The Pandemic Is the Right Time to Defund the Police’
Coverage of where and why ‘Students Demand Campuses Cut Ties With Police’
Ruth Wilson Gilmore’s “Is Prison Necessary”
Coverage of Mpls. proposal to cut contract with MPD
A resource on abolitionist transformative justice
Mental Health Resources for Pittsburgh
Black Lives Matter syllabus
Professor Waverly Duck's new book, Tacit Racism
大学のダイバーシティとインクルージョンについてのリソースは、 Office of Diversity and Inclusion のサイトを参照ください。