400字で分かる落語「いが栗」
「い」の11:いが栗(いがぐり)
【粗筋】 旅人が甲州山中で道に迷い、ぼろぼろの衣で髭ぼうぼう、いが栗頭の坊主が一心に祈っているのを見つけた。声を懸けるが無視され、君が悪いのでそこを離れる。暮方になって一軒のあばら家を見付けて宿を請うと、老婆が「夜中に怪しいことが起こるので人里離れて暮らしている」と言われる。夜中に娘がうなされるのをのぞくと、昼間の坊主が娘の枕元に坐っている。
翌日旅人は山道を引き返し、坊主に「お前のせいで娘は死んだぞ」と声を懸ける。坊主は「死にましたか」と言うとぐずぐず崩れて白骨になってしまう。戻ると娘は具合がよくなり、旅人は婿に迎えられる。婚礼の夜、天井裏でガタガタ音がして、鼠除けに置いてあった栗のいがが娘の頭に落ちて来た。
「ううん、まだいが栗の祟りが残っていたか」
【成立】 「五光」という噺を三遊亭円馬(2)が改作したもので、桂小金治が良かったという。私は桂歌丸しか聞いていない。坊主の正体と祟る理由が分からないのでもの足りなく思っていた。落語ではそういう枝葉末節はどうでもいいのかも知れないが。
月(つく)よみの光を待ちて帰りませ山路は栗の毬の落つれば 良寛
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