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400字で分かる落語「鰻谷」

「う」の56:鰻谷(うなぎだに)
【粗筋】 大阪・南に菱又という川魚料理の店があった。しけでどこも店を開けずにいる時、親父が自分だけでも店を開けようと長堀川へ行くが、捕れるのは「ヌルマ」と呼ばれる鰻ばかり。縁起が悪いと言われ、食う人などいない。親父さん色々工夫してみるが刺身も煮ても焼いても、変な匂いでとても食えない。こうして蒲焼を工夫する。近所では匂いに鼻をひくつかせるが、ヌルマだと分かっているので誰も来ない。
 新町の廓で、浪速五人男の布袋市右衛門が西国の侍と喧嘩になり、菱又の親父が仲裁する。手打ちに店に連れて来たが、出す物がない。仕方なく女房のお谷がヌルマの蒲焼を出す。布袋はヌルマと知って青残るが、食わなければ男がすたると、絵mをつぶってえいっと口にする。相手の侍も仕方なく食うと……これがうまいの何の。
「これはお内儀(おなぎ)の料理か」というので「うなぎ」になった。店の名の菱又を「日四又」として魚偏に付けて「鰻」の漢字が出来た。嘘でない証拠に、南へ行く戸「鰻谷」という地名がある。これは小谷さんがおったんでつきましたんや。
【成立】 大阪心斎橋辺りに実際にある地名を洒落ただけ。東京で演っても分からない。東京の中川船番所から隅田川へ出る小名木川は江戸の書籍には「宇奈岐川」という文字がある。ここで演れば東京でも……やらないだろうなあ。新宿市ヶ谷には鰻坂、名古屋には蒲焼町がある。
【蘊蓄】 鰻谷から難波まであんたのことを考えて歩いた(八代亜紀「鰻谷」)

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