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400字で分かる落語「鰯干し」

【粗筋】 女房が鰯を開いて干す仕事をしているのを見た亭主、どうして開いて干すのだと尋ねると、「丸干しは乾きが襲い」と答えた。働く女房の尻を見てその気になり、終わったが紙がない。仕方なく自然乾燥に任せたが、女房が先に仕事に戻ったので、「何だ、もう乾いたのか。俺のはまだだ」「そりゃそうさ。丸干しは乾きが遅い。
【成立】 安永2(1773)年『さしまくら』の「畠中」。うぶな私には何だかよく分からない。昭和40年代の速記では、鰯干しではなく野良仕事。前置きも何もなく、「おめえさんのは丸干しで、おらのは割干しだ」と言っている。当然本に収められたタイトルも「干しもの」だが、粗筋の方が筋が通っている。
【蘊蓄】 其地(仙台)にて生鰯を一銭に十四、五も売れば(中略)都にては、ちいさき干鰯を一銭に十六、七にも当る。(井原西鶴『万の文反古(よろづのふみほうぐ)』元禄9(1696)年正月刊)
 十で三十六文の鰯が一尾ずつ(河竹黙阿弥『勧善懲悪覗機関(かんぜんちょうあくのぞきからくり)』文久2(1862)年8月、守田座で初演)
 値段は時代や場所で様々だが、最も安価な魚で、よくかみさんが「鰯が冷めちゃうよ」ってどなっている。読売新聞(2002年2月1日付夕刊)によれば、1月最終週の値段が、平均キロ1505円、最高価格が2100円にもなり、平均ではハマチより、最高値ではカレイより高くなったとある。

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