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400字で分かる落語「宇治大納言」

「う」の23:宇治大納言(うじだいなごん)
【粗筋】 歌舞伎役者は人気だが、噺家はぞんざいに扱われる。役者を見ると、「顔を見ただけで妊娠しそう」、噺家は顔を見ただけで流産しそうで……
 しかし、考えてごらんなさい。歌舞伎の元祖は出雲阿国という鍛冶屋の娘。一方落語の祖は宇治大納言と言うお公家様。阿国は河原で興行し、役者を「河原乞食」と申します。大納言は宮中で落語をなすったので、名前だってそうで、芝居の方は中村吉右衛門、片岡仁左衛門、とまるで薪屋の爺さん。落語は三枡家小勝、柳家小さん、さん馬など色っぽい。顔もいい。役者を見た後ご亭主を見るとがっかりして別れ話になるが、落語を聞いていれば家庭円満。歴史を見ても、現実を比べても、落語の方が尊いということでございます。
【成立】 三升家小勝(5)の十八番だったという。その後桂文治(9)が演じ、「芝居は舞台だが、落語は演じる人の格で高座でやる、冠をかぶってやりたいが、私がかぶるとエテ公になってしまう」と落としていた。小勝は皮肉屋として知られているので、もっと辛辣だったかも知れない。最初の部分は柳亭痴楽(4)がネタにしていた。
【蘊蓄】 宇治大納言・源隆国は、11世紀後半に『宇治大納言物語』という説話集を編集したとされる。これは『宇治拾遺物語』が「宇治の物語」に落ちている物を集めたというタイトルで、関連があるものとされているが、現存していない。

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