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400字で分かる落語「浮世風呂」1

「う」の15:浮世風呂(うきよぶろ):その1
【粗筋】 女湯では挨拶が定番。お婆さんが、「お久し振りでございます。新年にはご挨拶も出来ずに……」から一年を振り返って挨拶。
「お婆ちゃん、もう相手がいませんよ」「あらまあ、いつ行ってしまったの」
「お盆の頃ですよ」「あらまあ、もう半年にもなるのね」
男は歌で、女は噂というのが、湯屋の相場。男湯では都々逸が始まるが、欠伸交じりの「湯ぶくれ都々逸」、「お念仏都々逸」と神経が緩む者が多い。小僧は「おまいを待ち待ち蚊帳の外~蚊にくわれ……」と歌い出すが、「おい、湯がはねらぃ」「こちゃかまやせぬ」
 義太夫好きな隠居がうなり出すが、「私のお尻の下よりも、たぎりし湯玉が煮え上がり……これがこらえて……いらりょうかァ」
 年越しの晩、番頭が「あぁらめでたいな、めでたいな。めでたきことにて払おうなら、一夜明ければ元朝の、鶴の声する車井戸……風呂屋づくしのことなれば、柘榴口へ、ざぶぅり、ざぶり。背中洗いましょう垢落とし」
【成立】 文化6(1809)年の式亭三馬『浮世風呂』に題材を得た話だが、くすぐりはほとんど「湯屋番」に転用され、音曲部分だけが残った。最後は厄落としの台詞で、実際に聞かないと分からない。三遊派は義太夫で、柳派は役払いで落としていた。三遊亭円生(6)は『円生百席』で厄落としを用いている。『明治大正夢の名人寄席』に柳家小さん(3)が入っている。実際に聞いたのは春風亭小柳枝(7)と雷門福助だけ。
 お婆さんの挨拶は天明2(1782)年『笑顔はじめ』の「長口上」で、「端午の時にお帰りになりましたから、もう半年もたちましょう」という。これは中国の『笑林広記』の「作揖」が原話。安永2(1773)年『坐笑庵』の「瞽女(ごぜ:盲人で三味線などを弾く女性)」は、おしゃべりな瞽女の挨拶中に客が帰ってしまい、「いつお帰りになった」「五月、かしわもちの出来るころに」「それもそのはず、あの人は上戸だ」

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