400字で分かる落語「打飼盗人」
「う」の47:打飼盗人(うちかいぬすっと)
【粗筋】 盗人が入るが金目の物が何もない。家の男は博打ですっからかんになったと言う。「博打するような奴はカスや」「盗人よりましでんなあ」盗人が男の話を聞くと、本職は大工で、道具を質に入れていると言う。行きがかりで、道具や着物の請け出しの料金だけでなく、飯の分から店賃まで出してやる。「真面目に働けよ」と意見して表に出ると、後ろから「おい、泥棒、盗人ぉ」と追って来た。「泥棒とは何だ。何をしに来た」
「からの打飼忘れとります」
【成立】 「打飼」は木綿の袋で、胴に巻く財布。笑福亭松鶴(6)は「財布」と言っていて「打飼」という言葉はどこにも出ないが、ネタ帳には「打飼盗人」と記録していた。
安永5(1776)年『気の薬』の「貧乏者」は、追って来て煙草入れを渡す。文化4(1807)年喜久亭壽暁のネタ帳『滑稽集』に「夏どろぼう」とあり、東京では「夏泥」。そちらで説明するが、「また時分の変わり目に来てくれ」というのが本来の落ちだが、柳家小さん(5)は「おい、泥棒」「泥棒とはなんだ」「お前の名前が分からねえからよ」という落ちを作った。上方の評論家には「理屈っぽくなりすぎる」とあまり評判が良くない。