400字で分かる落語「意地比べ」2の2
「い」の26:意地比べ(いじくらべ)全2回の2
【成立】 岡鬼太郎の作。三遊亭円左(1)が初演、柳家小さん(3~5)が演じた。落ちは中国の『笑府』、江戸の小噺にもあるが、前半の借金に関するやりとりを工夫したという。小さん(4)は、押し問答の間に奥さんが来て食事をしろと言う。その間奥さんが代わりに立つことにするが、相手は代わりがいないので、こちらの旦那が、「いいよ、お前が食べて来る間、私が代わりをするから」
小さん(5)はこの落ちを演じようとして混乱してしまい、「しょうがねえ、一緒に飯を食おう」
【蘊蓄】 中国の『晋書』の「漱石枕流(そうせきちんりゅう)」、孫楚(そんそ)が、隠遁(いんとん)して「漱流枕石(流れに漱(くちすす)ぎ、石を枕にするような生活)したい」と言おうと思ったら、「漱石枕流したい」と言ってしまう。友達の王済(おうさい)が指摘すると、「流れを枕にするのは、耳を洗うためだ。石に漱ぐのは、歯を磨くためだ」と言って、自分の過ちを認めなかったという。(『世説新語』にも同じ話がある)
うまくごまかして言い逃れること、負け惜しみが強いこと、を意味する。「さすが」という言葉に「流石」という漢字を当てるのもこの逸話から。夏目漱石というペンネームもここから取ったが、一度言い出したら絶対に曲げない「頑固者」という意味だそうだ。