400字で分かる落語
「あ」の落語第18席:明石飛脚(あかしびきゃく)
【粗筋】 飛脚が間に合わないので、足自慢の男に頼んで、大坂から明石まで14里、手紙を届けるよう依頼する。男は「ドッコイサノサ」と鳴り物入りで走り出す。西宮まで来ると、「夷っさんのある所やな。もし、そこの方、大坂から明石までなんぼおますやろ」
「それなら14里や」
「さよか……大分走ったと思うたが、全然進んどらんな……ドッコイサノサ」
三宮、兵庫、須磨と順調に進むのだが、「大坂から明石まで」を聞くから、距離は全く減らない。男はへとへとになって茶屋で寝込んでしまう。店の者に起こされて、
「はっ……ここはどこだす」
「ここは明石や」「えっ、明石……ああ、走るより寝てる方が速い」
【成立】 上方噺。台詞だけで行く先々の風物を織り込む、なかなかの佳作。短いので、「雪隠(せんち)の飛脚」「うわばみ飛脚」と続けて一席にすることもある。後は帰り道。
【一言】 ゴールは明石の人丸神社。「火止まる」で、火除けと安産の神。