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400字で分かる落語「田舎芝居」2

「い」の71-2:田舎芝居(いなかしばい)2
【粗筋】 『忠臣蔵』で、いよいよ判官切腹までこぎつけたが、花道から出るはずの「諸士」が出ない。のんびりと弁当を食っているので、先生役の中村福寿があわてて「ショシ」と呼ぶと、次の幕で出る猪が、「シシ」と呼ばれたのだと思って飛び出した。客がまたまた騒ぎ出し、「判官切腹に猪が出るちゅうことがあるか」「殿様が腹切るから、領内の獣が暇乞い(いとまごい)に来ただんべ」
【成立】 その1で終わる場合と違って、ここまで演る場合は義太夫も入れて大掛かりになる、と書かれている。戦後は林家彦六(正蔵・8)が演じたという記録があるが通しで演ったのか、その2だけか未詳。
【蘊蓄】 江戸時代に起こった事件を描いた『忠臣蔵』は幕府への遠慮から、室町時代に移して演じられる。『太平記』の塩谷判官、高師直を取り、師直が判官の妻・顔世に横恋慕するのをそのまま用いた。赤穂の殿様が塩谷判官というのが面白い。恋文を代筆したのが兼好法師である。後は江戸の実際の人物をもじり、大石内蔵助が大星由良之助などとした。事件当時は一種のテロリストとして世間の目も冷たかったが、翌年浪士らが切腹すると、切腹は武家の名誉だと一躍人気が出て、もうその夏に芝居になったが、曽我のパクリで評判にならなかった。今のような形の芝居が大評判となるが、これが47年目だった。

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