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400字で分かる落語:「按七」
116:按七(あんしち)
【粗筋】 按摩の七兵衛、無筆なのだが字が書けると嘘をついて一両を賭け、さっそく寺子屋の先生に「七」の字だけを教えてもらう。友達の所へ戻ると、先生と同じ解説をしつつ横棒を弾き、縦へ棒を伸ばすと、友達が驚いて「おい、七つぁん、分かった。苦しいんだから、二分に負けてくんな」「ええい、ケチなことを言うな」って、左へ曲げてしまった。
【成立】 三遊亭円生(6)、三遊亭金翁などを聞いた。安永(1772~81)頃に成立した『小鍋立』の「無筆」は、この後「これ、七といふ字は尻を右へ曲げるのだ」と言うと「エゝばかな。裏からみやれ」と答える。寄席などでは蛇足だろう。
文字を教わる場面では、空間に書いた文字を手先で消す。地面に書いても、踏むのはもったいないというので必ず消していた。昭和初期に出た煙草に文字があり、消すのに字をつぶしてはと全く売れなかったという。
宙に書いた文字に頭をぶつけるといけないという「棚の字」という小噺もある。