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400字で分かる落語「牛の子」

「う」の27:牛の子(うしのこ)
【粗筋】 田舎に住み始め、食べ物が安いと自慢。安いのも当然、魚は池で、野菜は畑で取り放題。後は牛乳が飲みたいと言う。兄貴分が、死んだ母が夢に出て来て牛に生まれ変わったという話をすればいいと教えられ、さっそく出掛けて行く。牛飼いは信用しないが、額に塩を塗っておいて、牛が男をべろべろとなめるのですっかりだまされる。親子で話をする振りをして、牛乳をたっぷりいただいた。味を占めたこの男、また出掛けたが、困ったことに前の母親だといった牛がどれだか分からない。懸命に思い出して、「あ、これだこれだ。おっかさん、また来ましたよ」
「おい、おまいさん、それは雄牛だ」
「……ああ、おやじの方でございます」
【成立】 明治の頃の噺で、入船亭扇橋(8)が演じていたという。小噺程度のものだが、今村信雄が改定したものを三遊亭円生(6)が演じた。秦の始皇帝の故事から塩を使うことを思い付くなどを加えて一席にふくらましたもの。始皇帝は阿房宮に三千人の美女をおき、牛に乗って出かけ、牛の止まったところに泊まることにする。ところが、同じ女の所にばかり止まるので調べてみると、女が家の前に塩をまいていた。これが盛り塩の始まりで、お客が来るようにという意味。プロ野球で負け続けたチームがベンチの前に盛り塩をして笑われたこともある。頭悪いなって……ああ、だから野球で生きるしかないのだ。清めはまくもので、盛り塩ではない。

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